2014年6月18日水曜日

micro iDSD開発(15)パワーサプライ・セクション・スペシャル(i)

この記事は、micro iDSDの発売を控えたiFIのテクニカル・チームがHead-FIやFaceBookに掲載しているものです。

以下は6月13日の投稿------------

http://www.head-fi.org/t/711217/idsd-micro-crowd-design-software-design-notes-4-no-ordinary-dsd-page-56/765#post_10631317


昨日の「スーパー・デューパー1.7:スマートパワー」に引き続き、私たちがついに到達したパワーサプライ(電力供給)の根本的な解決策と、micro iDSDのために開発された様々な副産物に興味を持っていただけるのではないかと思います。


パワーサプライ・セクション・スペシャル(i)

ミーティー・モンスター(肉付きの良い怪物=このプロジェクトのコードネーム)はパワーに狂っている!
パワーサプライは、あらゆるオーディオ機器の核心にあるものです。オーディオ信号に変調された電力を供給するのです。パワーサプライには、いくら注意してもしきれません。“ミーティー・モンスター”という怪獣の胸の中では、2つの心臓が鼓動しています。しかも、非常に、非常に急速に鼓動しているのです。そのパワーは、ポータブルオーディオ機器では最大級のバッテリーのひとつから、引き出されています。


A. 哀れな古くさい標準500mA USBポート…
“どんな”DACにもヘッドアンプ(ポータブルにはこだわらない)にも適合した、もっともパワフルなヘッドフォンアンプのひとつを生み出すためには、micro iDSDにふんだんなパワーが必要です。私たちの18ワット/時リチウムポリマーバッテリーは18ワットを1時間、または1.8ワットを10時間供給することができます。これが、ふんだんなパワーです。

しかし、標準的なUSBポートは500mAに制限されています! この問題は、私たちだけの問題ではありません。チャンネルあたり1ワットを引き出してDAC、クロック、XMOS USBインターフェースに電力を供給するには、500mAではまったく不十分です。

インテリジェント・パワーパス(IPP)
500mAを供給する標準的なUSBポートでは、 micro iDSDを“xxx”モード(これについての解説は、OTW#2までお待ちください)でしか駆動できず、バッテリーに充電するために電流を残すことはできません。

このため、micro iDSDでは、USBで電力を供給する時のために特別な“インテリジェント・パワーパス”バッテリー・チャージャーを開発しました。USB電力で駆動中にさらに電力が余計に必要になったら、USB電力を“バックアップ”するために、バッテリーの電力を使うのです。つまり、電力のピークを支えるために、micro iDSDが不足分をバッテリーにバックアップさせるのです。必要に応じてガソリンエンジンを使うハイブリッドカーにちょっと似た感じですね。

B. このようなばかでかいバッテリーだと、再充電するのにとんでもない時間がかかってしまう!
だからこそ私たちは、充電専用のアタッチメントと、現代の多くのコンピューターに装備されているハイパワーUSBポートを感知する特別な回路を、ひとつにまとめたのです。micro iDSDはこれらのポートを感知して、いわゆるBCP-1.2の基準を利用することができ、オーディオを再生することができ、“しかも”コンピューターから、貧弱な500mAではなく、1500mAを引き出すことができるのです。こうして、通常の使用では、音楽を同時に再生しながらも、バッテリーは5時間程度で充電できるのです。

C. ハイパワー出力にはハイボルテージが必要
パワフルなヘッドフォン出力を引き出すためには、パワフルな、ハイボルテージのパワーサプライが必要です。最高で4.2 V程度に制限されたリチウムイオンバッテリーでは、8個のバッテリーを直列で使う(そのためには莫大なスペースと非常に複雑な充電システムが必要になります)か、あるいは1つのバッテリーボルテージを必要なボルテージにステップアップするために何らかの形でパワー変換をすることが必要になります。

D. 正電圧と負電圧の両方が持てるのか?
妥協のないオーディオパフォーマンスのためには、負電圧と正電圧のダブル供給が必須です。それゆえ私たちは、±4.5V@1,000mAから最高で±13.5V@500mAまで調節可能なシンメトリカルなPSU(パワーサプライユニット、電源ユニット)を創り出すために、パワーコンバーターを使っているのです。

私たちの最初のステップは、理論的に非常に巧妙な設計で、このアナログ式のダブルレールパワーを生み出すことでしたが、実際にはうまくいきませんでした。効率の良い設計に至ることが決してなく、断念せざるを得ませんでした。これは、ひと月ほど前にいちばん大きな問題だったのです。

私たちの次のステップは、2つのコンバーターをつなげて使うことでした。第1コンバーターを、必要な電流の2倍で、調節可能な正電圧にし、次に第2コンバーターを使って、このパワーラインを反転して負電圧を供給できるようにするのです。


この回路だけでも、なかなかの挑戦になりました(実際のところ、大変な挑戦でした)。パワーICは数多く売り出されているのですが、私たちのニーズに合っているものはほとんどなく、その中でも、出力ボルテージをリアルタイムで調節できるものは、さらに少なかったのです! 私たちは、巧妙な設計を許してくれるだけの柔軟性を十分に持ったチップを見つけなければなりませんでした(100種類以上のICを試しました)。こうして私たちは、このコンバーターの出力電圧を、私たちの32ビットARM Cortex CPU(12ビットDACが組み込まれています)から調節することができるのです。

こうして私たちは、出力ボルテージを4.5V〜13.5Vの間で、精密に4000ステップ以上にわたって調節することができます。このチップは、0.64MHzで95%の効率で動作し、PCB(プリント基盤)のごく小さなエリアを占めるだけです。堅固なアース接地面とシールドされたチョークを持っているので、ノイズの放射は非常に低いです。

しかし、これでは正電圧の供給しかできず、負電圧のラインがありません。次のステップは、この正電圧のパワーラインを反転する方法を見つけることです。

ここでもまた、既製品で利用できるようなものはありません。私たちは、また“記録に載っていない仕様”を使って、正電圧レールを精密に反転する、サーボコントロールされたパワーコンバーターを創らなければなりませんでした。正電圧レールを調節することによって、負電圧レールが精密に1-2mV以内になるようにしたのです。



注:サーボコントロールされたパワーコンバーターは、通常は何1000ドルもする機器にしか使用されません。AMRのPH-77などです(12000ユーロ、12000ドル)


   
 パート2に続く

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