https://www.soundstagenetwork.com/index.php?option=com_content&view=article&id=2791:ifi-audio-go-bar-dac-headphone-amplifier-measurements&catid=363&Itemid=444
また、国内において、一般的でない表記については、注釈を〔〕内に記載しております。
84歳になったリード楽器プレーヤーのチャールズ・ロイドは、その長いキャリアを通じてきわめて多様な形で自己を表現し、どんな役を演じようと、常に聴衆を見出してきた。チコ・ハミルトンの人気バンドではエリック・ドルフィーの代役を務め、ミュージカル・トライブの「Big Sur」(その中にはビーチ・ボーイズのメンバーも含まれていた)ではその名祖となり、ジョン・コルトレーンの後継者と見なされる数名のサクソフォン奏者のひとりともなったのである。彼がこれまでにやってきたすべてのことの中を流れているのは — そして長年にわたって聴衆をつなぎとめてきた大きな要因は — 静かなスピリチュアリティーの感覚である。
歳を取るにつれて、ロイドの演奏はますますメロウで思いをめぐらすようなものになっているが、これが彼のテナー・サクソフォーンの年輪を刻んでいく音と理想的な一致を見せる。その音は、明らかにざらざらとした感じになっているのである。彼のサウンドは、年配の「クルーナー」〔低い声で感傷的に歌う男性歌手〕の声のようであるが(ごつごつして、多少ピッチが甘い)、彼の耳は今なお「巨匠画家」〔ミケランジェロやラファエロなど〕のように敏感である。かつて明るい色彩をまき散らしたところに、今や彼のパレットは、もっと暗い、もっと豊かな色合いを与えている。色使いをもっとよく考えているのである。
こういったキャリア後期の特徴が、「Trios:Chapel」(24ビット/96kHz WAV、Blue Note Records)でフルに示されている。ロイドが今年リリースする予定になっている3つのトリオ・レコーディングの第1弾である。大いに気の合うギター奏者ビル・フリゼル(最近はロイドと頻繁に共演している)とベース奏者のトマス・モーガンを起用して、2018年にテキサスのアート・スクールで演奏された「Chapel」は、静かな、テクスチュアのきわめて濃密な歌で満たされており、そこでは何も急ぐことなく、すべての和音が慎重に選ばれているのである。
トリオがこの種の瞑想的な旅に乗り出す時には、サウンドステージ〔音場〕が4番目のバンド・メンバーになることがある。このレコーディングの場合は、ジョー「トーン・ポエット〔音の詩人〕」ハーリーが録音を監督したということ、そしてコヒアレント・マスタリングのケヴィン・グレイがLPのマスターを行ったということに注意しなければならない。
「Chapel」は、ロイドの静かで落ち着いた性質を具現化したものであるという前提で考えると、ZENと呼ばれるコンポーネント以上にこのサウンド・テクノロジーにぴったりのものがあるだろうか?
iFi audioが今年リリースしたZEN One Signature DAC(49,500円[税込])は、「あなたが必要とする唯一のDAC」であることを約束し、事実、解像度32/384までのPCM、DSD256、MQAデコーディング、そしてBluetoothの多数のコーデック(AAC、aptX Adaptive/HD/LL、LDAC LHDなど)をすべて組み合わせている。
同軸入力/出力(RCA)、光入力(TosLink)、USB Type-Bに加えて、ZEN One SignatureはステレオRCA(ラインレベル)出力と4.4.mmバランス出力も装備している。
ZEN One Signatureの楕円形のケースのデザインは、サイズが158mm(幅)×100mm(奥行き)×35mm(高さ)で、iFiのZEN DACの全シリーズと見た目が揃っている。以前に書いたように、それらは小さく、20世紀中期のモダンな逸品といった感じで、1960年代のGMのクルマのダッシュボードに置いても違和感がないだろう。
ZEN One Signatureの機能のすべてを述べることはやめておこう。同僚のデニス・バーガーが「SoundStage! Access」で非常に深い検証をし、この機器が対応している様々なデジタル・オーディオ・フォーマットの詳細を解説しているからである。
ただ、ひとつ私がデニスの批評中で強調しておきたいのが、ZEN One SignatureのなめらかなBluetooth接続である。音楽をストリーミングするのにBluetoothを使ったことがある人ならだれもが、ソースを切り替える時に生じることがある、さらには同じソースの歌の途中でも生じることがある、様々なクリック音、ポップ音、あるいは欠落をよく知っているだろう。クアルコムのQCC5100 Bluetoothレシーバーと専用のテクノロジーを使うことで、iFiはこの特定の煩わしい問題を排除しているように見えるのである。
16インチMacBook Pro上のRoonからZEN One SignatureにBluetooth接続して「Chapel」のストリーミングを始めた。ZEN One SignatureはRCAケーブルでNADのD3045プリメインアンプに接続し、そこからQ Acousticsの3050iフロアスタンディング・スピーカーにつながっている。優しく揺れる「Ay Amor」(キューバの作曲家ビラ・フェルナンデス・イグナシオ・ハシントの美しい作品である)では、ロイドのテナー・サックスのざらざらとした感触が手に取るようにはっきりとわかり、フリゼルのアンプ経由のギターがモーガンのアコースティック・ベースと並外れたバランスを見せる。
ロイドのオリジナルの作品3曲が、インプロヴィゼーションの豊かな機会を与え、「Dorotea’s Studio」が、フリゼルの長い抽象的なソロに続いて、各奏者にきわめて変化に富んだリズム・プレーの場を与える。
私は最近、フリゼルが参加した別のアルバムの批評を書いたことがあるが 、「Chapel」での彼の音とアタックは、チェス・スミスの微分音による「Interpret It Well」で彼が楽器から引き出した、エフェクトたっぷりのうなりとは、これ以上ないほど異なっていた。ここではフリゼルは自分を抑えて精確な演奏を行っており、彼のシグナル・チェーンはきわめてクリーンなので、彼のフィンガーリングとピッキングのテクニックをほんとうに味わうことができる。
ノートパソコンをハイファイ装置にもっと近づけて、AudioQuestの Carbon USBケーブルを使ってZEN One SignatureのUSB入力に接続し、WAVファイルをロスレスでストリーミングできるようにした。
極上の演奏によるビリー・ストレイホーンの名曲「Blood Count」では、ロスのあるBluetoothワイヤレス接続とロスレスの有線接続との間の、室内でのプレゼンスと明晰性の違いが、はっきりとわかった。USB接続では、モーガンのベースの共鳴が増し、フリゼルの弱音器を付けた爪弾きと鳴り響く共鳴から、より多くのテクスチュアが聞き取れたのである。
これらの演奏者たちは、ストレイホーンの和声構造の内側に深く入り込んでいるので、私ももっと深い音の体験をしたいと思ったのだった。
そうするために、私はiFi audioのもうひとつの新製品に手を伸ばした。GO bar(49,500円[税込])がそれで、堅牢な感触のポータブルUSB DAC&ヘッドフォンアンプである。ポータブルDACの市場は競争に溢れているが、それでも新製品が登場するのに応じてますますニッチな方向に階層化している。GO barは、AudioQuestのDragonfly Cobalt(329.95ドル)やEarMenのColibri(333ドル)のような競合製品に相当する製品だが、iFiはこれを「このサイズでは世界最高のパワフルなヘッドフォンアンプ」と位置づけている。
バランスヘッドフォン用の出力は475mW(32Ω)または7.2V(600Ω)である。アンバランス用の出力は300mW(32Ω)または3.8V(600Ω)である。
iFiが発表している周波数レスポンスは、20Hz〜45kHz(-3dB)である。GO barは16コアのXMOSマイクロコントローラーと32bitのシーラス・ロジックDACチップセットを使用してオーディオ・データを処理している。そして、ZEN One Signatureと同じように、32/384までのPCMとDSD256の再生に対応している。
オプション・モードの「XBass+」と「XSpace」を使用すると、前者はアナログでバスをブーストする機能を、そして後者は空間感を増す機能を果たす。それらがどうやってその機能を果たすのかは、そしてまた「XBass+」が、私がメインデスクで標準のリスニングに使っているiFiのZEN DACの同様の(しかし名称の異なる)オプションとどう違うのかは、幾分かはっきりとしない。
たったの22mm(幅)×65mm(奥行き)×13.2mm(高さ)というサイズ(これもまた競合製品と一致する)のGO barの金属製シャーシには、モードの選択とボリュームをコントロールするボタンと、設定と入力データのサンプリングレートを示すための1列に並んだ小さなLEDが装備されている。これらのLEDは、意味がないことがわかった。それどころか、かなりイライラさせられることもわかった。というのも、ライトグレーの文字が、それよりもわずかに濃いグレーのケース上に印刷されているので、実質ほとんど読めないからである。
GO barの片側にはUSB-C入力が装備されており、その反対側には3.5mmアンバランス出力と4.4mmバランス出力が装備されている。スライドスイッチ(どちらの出力も)によって、iEMatchを選択することができる。このiEMatchは、出力インピーダンスを増加させて最大出力電圧を低下させることによって、高感度のヘッドフォンやIEM(インイヤーモニター)に合わせることができるとともに、背後のノイズも低減させることができるという機能である。ここでもまた、この機能はZEN DACで提供されているPower Matchモードと同様なものに見える。さらにGO barは、Turbo設定も提供している。ゲインを6dB増加させて、もっとパワーを食うヘッドフォンに対応するようにしているのである。
私がオフィスで音楽を聞く際の大半に使用しているHiFiManのHE400seヘッドフォンで試聴を始めた。GO barにはUSB-C編み込みケーブルが付属しているので、これをMacBookのThunderboltポートに接続することができる。こうして私はスマートフォンをGO barに接続して、再び「Blood Count」を聞いた。
モーガンのベースの共鳴の多くが失われているのがすぐにわかった。そしてサウンドステージ全体が、ZEN One Signatureと先述した私のコンポーネンツで聞いた時よりもわずかに窮屈に感じられた。
GO barのオプション・モードをチェックする前に、私は2つ目の基準を得ることにした。GO barをZEN DAC と入れ替えて、HiFiManのヘッドフォンにつなぎ、再び聞いてみたのである。
こうすると、先述した私のシステムで聞いたものにかなり近くなるように見えたので、GO barに戻って少し微調整することにした。「XBass+」を使用しても、ほとんど違いがないように見えたが、「XSpace」フィルターを加えると、サウンドステージが明らかに開放され、音楽に焦点が合うようになった。
続いて、出かける時にはほぼ常に持参するShureのSE355IEM(2012年のビンテージだ)とiPhone XS Maxを使って、歩きながら「Chapel」を聞いてみた。以前のように、ドングルを探にしいく必要はなかった。iFiは、GO barをiOS機器に接続するためのUSB-C/Lightningケーブルも同梱してくれているのである。
もう一度聞いてみると、フィルターなしでは「Blood Count」が若干生気不足のように聞こえた。全然悪くはないのだが、全体に満足感がない。ここでは、「XBass+」も「XSpace」も独自の大きな違いを生み出したとは感じなかったが、この2つを組み合わせると、モーガンのベースとロイドのホーンのボトムエンドの対比がいっそう際立った。
だが、間違わないでいただきたい。GO barはiPhoneの内蔵DACに比べればはるかに優れたリスニング体験をもたらしてくれた。「Blood Count」を、FMラジオで聞く時に期待できるのとほぼ同じ深さと空間感で再生したのである。換言すれば、GO barがなくても音楽は説得力があり、ほっとするようなものではあったのだが、音に浸ることはできなかったということである。
そしてこのレコーディングでは、この音楽に浸るという感覚こそが進むべき道である。ロイドの信条とする平和と静かな生活の長い歴史と同じように、「Trios:Chapel」は、すてきな音の体験の内側へと私たちを連れていってくれる。それに近づけば近づくほど、ますますそれを楽しむことができるのである。
ジェイムズ・ヘイル
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iFi audio GO bar DAC&ヘッドフォンアンプ
各種測定結果
全般情報
すべての測定はAudio PrecisionのAPx555 Bシリーズ・アナライザーを使用して行っている。
iFi audioのGO barは、測定を行う前に0dBFS(2Vrms出力)、300Ωで30分間稼働の状態にしている。
GO barに可能な入力はUSB入力のみである。ヘッドフォン出力は2系統備えている。3.5mm TRSアンバランス出力と、4.4mm TRRSバランス出力である。比較は、24/96、0dBFS入力を使用し、アンバランス出力とバランス出力の間で行い、ノイズ、THD(全高調波歪)、ダイナミック・レンジを調べた。バランス出力の方がゲインと電圧が6V高い点を除けば、2つの出力は実質的に同じである。
GO barはIEM(インイヤーモニター)とのマッチングを可能にするセレクターを装備している。感度の高いIEM用に出力電圧を下げるのである。このスイッチは、測定時にはOFFの位置に設定している。ボリュームの使用に関係するTurboモードもある。このTurboモードを使うことによって、GO barの出力電圧の潜在能力をフルに引き出すことができるようになっているのである。Turboモードは、測定時にはONにしている。ユーザーが選択することのできる4つのデジタル・フィルターも装備されている。すべての測定は、特に述べている箇所を除いて、標準的なSTDフィルターを使用して、バランス出力で行っている。4つのフィルターは、GO barの使用説明書では、以下のように説明されている。
・BP(シアン)ビットパーフェクト:デジタルフィルターなし、プリ / ポストリンギン
グなし
・STD(赤色)スタンダード:適度なフィルタリング、適度なプリ / ポストリンギング
・MIN(黄色)ミニマムフェーズ:スローロールオフフィルタ、最小プリ / ポストリンギ
ング
・GTO(白色)ギブズ・トランジェント・オプティマイズド:352/384kHz にアップサン
プリング、ミニマムフェイズ、プリリンギングなし、最小ポストリンギング
GO barは、20kHzを超えるとかなりのノイズを示すので(以下のFFT〔高速フーリエ変換〕を参照していただきたい)、周波数レスポンスの測定とFFTの測定を除いて、すべての測定で、10Hz-90kHzという弊誌の典型的な入力帯域のフィルター設定を10Hz-22.4kHzに必然的に変えることになった。さらに、限定された帯域設定で第二次高調波と第三次高調波を適切に捉えるために、THD対周波数の範囲は6kHzに限定している。
左右チャンネルのマッチング(以下の表を参照していただきたい)の様々なボリューム・レベルでの精確さと、何度テストしても優秀な結果にもとづいて、そしてまたアナログ入力がないことにもとづいて考えると、GO barのボリューム・コントロールはデジタル領域で作動するようになっているようである。ボリューム・コントロールは、2dBから0.5dBの増加量で、53ステップである。
ボリューム・コントロールの精確さ(ヘッドフォン出力で測定):左−右チャンネルのトラッキング
公表されている仕様 対 弊誌の一次測定
下の表は、iFi audioが公表しているGO barの測定値を弊誌の測定値と直接比較したものの要約である。公表されている仕様は、iFiのウェブサイトから直接引用したり、ダウンロード可能なマニュアルを引用したり、それらを組み合わせたりしたものである。Audio Precisionの帯域が最大(DC〜1MHz)に設定されている周波数レスポンスを除いて、特に述べている場合を以外は、同軸デジタル入力(0dBFS/2Vrms出力で96kHzでサンプリングされた1kHzのサイン波)、300Ωに設定したバランス・ラインレベル出力を前提として、10Hz〜22.4kHzの測定用の入力帯域、そして左右チャンネル間の最悪の測定結果を使用している。
* 300Ωで、左チャンネルのTHDは右チャンネルと同じ0.006%である。
弊誌の一次測定では、同軸入力とアンバランス・ラインレベル出力を使用して以下のことが明らかになった(特定していない場合は1kHzのサイン波を0dBFS/2Vrms出力、300Ωの負荷、10Hz〜22.4kHzの帯域で使っている)。
周波数レスポンス(16/44.1、24/96、24/192)
上図は、GO barのサンプリングレート機能としての周波数レスポンスを示している。青/赤の線は、5Hz〜22kHzの44.1kHzのディザリング処理したデジタル入力信号を表している。紫/緑の線は、5Hz〜48kHzの96kHzのディザリング処理したデジタル入力信号を、そしてオレンジ/ピンクは、5Hz〜96kHzの192kHzのサンプリング・データを表している。低域での挙動は、デジタル入力では同じであり、基本的に5Hzへ至るまで完璧にフラットである。3つのサンプリングレートの高域での挙動は、予想どおり、22kHz、48kHz、96kHz(それぞれサンプリングレートの半分)あたりで鋭いフィルターが適用されている。各サンプリングレートの-3dBの点は、ざっと言って、それぞれ21.1kHz、45.9kHz、89.7kHz(-3dB)である。また、この図を見ればはっきりとわかるように、3つの周波数レスポンスのどれもが「ブリック・ウォール」タイプの挙動を示している。上のグラフと以下のほとんどのグラフでは線が1本しか見えないが、これは左チャンネル(青、紫、オレンジの線)が右チャンネル(赤、緑、ピンクの線)とまったく同一の動きをしており、両方が完璧に重なっているからである。つまり、2つのチャンネルは理想的な一致を見せているということである。
周波数レンポンス(96kHz、XBass ON/OFF)
上図は、96kHzディザリング処理したサンプリング・データの、XBassを用いた場合と用いていない場合のGO barの周波数レスポンスを示している。青/赤はXBassなしで、紫/緑はXBassありである。XBassは、20Hzの地点で8dBのブーストが適用され、300Hz程度でフラットになることがわかる。
周波数レスポンス(44.1kHz、4つのフィルター全部)
上図は、左チャンネルのみ、300Ωの負荷でのフィルター1〜4までの、44.1kHzサンプリング入力データの周波数レスポンスを示している。STDフィルターが赤、GTOフィルターが紫、BPフィルターが緑、MINフィルターがピンクで表示してある。このグラフは、1kHz〜22kHzをズームインしたもので、レスポンスの「ニー」〔屈曲部分〕周辺のフィルターの様々なレスポンスをわかりやすく表示している。20kHzでは、STDフィルターは+0.1dB、GTOフィルターは-0.3dB、BPフィルターは-3dB、MINフィルターは0dBである。STDフィルターとMINフィルターは、ほぼ同じ周波数レスポンスを見せている。
注意:各フィルターの特徴は、先述の「全般情報」に記載している。弊誌が測定した周波数レスポンスは、全般にiFi audioの説明と一致している。
デジタル・リニアリティー(96kHz)
上図は、96kHzのサンプリングによる入力データのリニアリティー・テストの結果を示している。デジタル入力は、-120dBFSから0dBFSまで、ディザリング処理された1kHzの入力信号で流されており、出力はAPx555で分析している。理想的なレスポンスは、0dBでまっすぐでフラットなことである(つまりデジタル入力の振幅が、測定されたアナログ出力の振幅と完璧に一致するということである)。データは-100dBFSまで完璧にリニアーであり、-120dBFSでわずか-1dB、あるいはそれよりも良い数値である。
インパルス・レスポンス(44.1kHz、STD及びBPフィルター)
上図は、44.1kHzのディザリング処理したサンプリング・データでの、最初の2つのフィルター・タイプ(STDとBP)のテスト・ファイルを示している。Audio Precisionのトランスファー機能とインパルス・レスポンス機能を使用している。STDが青で、BPがピンクで表示してある。
注意:各フィルターの特徴は、先述の「全般情報」に記載している。弊誌が測定した周波数レスポンスは、全般にiFi audioの説明と一致している。
インパルス・レスポンス(44.1kHz、GTO及びMINフィルター)
上図は、44.1kHzのディザリング処理したサンプリング・データでの、残りの2つのフィルター・タイプ(GTOとMIN)のテスト・ファイルを示している。Audio Precisionのトランスファー機能とインパルス・レスポンス機能を使用している。GTOが紫で、MINが緑で表示してある。
注意:各フィルターの特徴は、先述の「全般情報」に記載している。弊誌が測定した周波数レスポンスは、全般にiFi audioの説明と一致している。
J-Test
上図は、GO barのバランス・ラインレベル出力でUSB入力をテストしたJ-Testの結果を示している。J-Testは、1990年代にジュリアン・ダットンが開発したもので、48kHz(24ビット)で(今回は)サンプリングした、-3dBFSのディザリング処理していない12kHzの矩形波のテスト信号である。12kHzの矩形波の最初の奇数調波(すなわち36kHz) がサンプリングレートの帯域制限で除去されても、12kHzのサイン波(主要なピーク)が残っている。さらに、-144dBFSでのディザリング処理していない250Hzの矩形波が、信号と混ざっている。このテスト・ファイルでは、最下位22bitが常に切り替わるようになっており、その結果、250Hzの割合で、そしてまたその奇数調波で、強力なジッター・スペクトラル成分が生まれている。このテスト・ファイルは、このDACと伝送インターフェースがどの程度ジッターの影響を受けるかを示している。このジッターは、500Hz間隔(すなわち250Hz、750Hz、1250Hzなど)のノイズフロアの上にピークとして現れるのである。潜在的ピークはテスト・ファイル自体の中にあるが、それは奇数調波の場合は144dBrA(250Hzで基本)から-170dBrAのレベルであることに注意していただきたい。このテスト・ファイルはまた、Audio Precisionによって人工的に投射されたサイン波ジッターとともに使用して、このDACがいかに見事にジッターを防いでいるかを示すこともできる。
FFTは、オーディオ帯域内で、しかし-130dBrAよりも下のレベルで、交替する500Hzのピークを示している。これは、GO barがジッターに対して敏感ではないということを示しているのである。
ホワイト・ノイズと19.1kHzのサイン波トーンの広帯域FFTスペクトラム(STDフィルター)
上図は、STDフィルターを使って、44.1kHz(紫/緑)のサンプリングレートで-4dBFS(青/赤)でホワイトノイズと、-1dBFSで19.1kHzのサイン波を与えた時の、GO barのバランス出力の高速フーリエ変換(FFT)を示している。ホワイトノイズ・スペクトラムの20kHzより上での鋭い減衰は、「ブリック・ウォール」タイプのローパス・フィルターが実行されていることを示している。-135dBrAのノイズフロアの上のオーディオ帯域には、6kHzあたり(-110dBrA)と13kHzあたり(-115dBrA)に、2つののエイリアシング・アーティファクトがある。25kHzでの主要なエイリアシング信号は-115dBrAの地点であり、その結果として生じる25kHzの基本波をピークとした高調波は、-80〜-70dBrAの近辺である。
ホワイト・ノイズと19.1kHzのサイン波トーンの広帯域FFTスペクトラム(BPフィルター)
上図は、BPフィルターを使って、44.1kHz(紫/緑)のサンプリングレートで-4dBFS(青/赤)でホワイトノイズと、-1dBFSで19.1kHzのサイン波を与えた時の、GO barのバランス出力の高速フーリエ変換(FFT)を示している。説明書の通り、BPフィルターはフィルターをまったく使用していない。そのことは、ノイズ・スペクトラムが非常にゆっくりと減衰するのを見れば明らかである。その結果、-135dBrAのノイズフロアの上のオーディオ帯域に、6kHzと13kHzで-90dBrAという高さのエイリアシング・アーティファクトがある。25kHzでの主要なエイリアシング信号は、予想通りほとんどまったく抑えられておらず、-5dBrAの地点である。
注意:各フィルターの特徴は、先述の「全般情報」に記載している。弊誌が測定した周波数レスポンスは、全般にiFi audioの説明と一致している。
ホワイト・ノイズと19.1kHzのサイン波トーンの広帯域FFTスペクトラム(GTOフィルター)
上図は、GTOフィルターを使って、44.1kHz(紫/緑)のサンプリングレートで-4dBFS(青/赤)でホワイトノイズと、-1dBFSで19.1kHzのサイン波を与えた時の、GO barのバランス出力の高速フーリエ変換(FFT)を示している。GTOフィルターは、STDフィルターやMINフィルターと比べて、ホワイトノイズ・スペクトラム中の20kHzより上では、穏やかな減衰を示す。-135dBrAのノイズフロアの上のオーディオ帯域に、6kHz(-110dBrA)と13kHz(-100dBrA)のところに2つのエイリアシング・アーティファクトがある。25kHzでの主要なエイリアシング信号は、-20dBrAで穏やかに抑えられるだけで、その結果として生じる25kHzの基本波をピークとした高調波は、このレベル以下である。
注意:各フィルターの特徴は、先述の「全般情報」に記載している。弊誌が測定した周波数レスポンスは、全般にiFi audioの説明と一致している。
ホワイト・ノイズと19.1kHzのサイン波トーンの広帯域FFTスペクトラム(MINフィルター)
上図は、MINフィルターを使って、44.1kHz(紫/緑)のサンプリングレートで-4dBFS(青/赤)でホワイトノイズと、-1dBFSで19.1kHzのサイン波を与えた時の、GO barのバランス出力の高速フーリエ変換(FFT)を示している。ホワイトノイズ・スペクトラムの20kHzより上での鋭い減衰は、「ブリック・ウォール」タイプのローパス・フィルターが実行されていることを示している。-135dBrAのノイズフロアの上のオーディオ帯域には、6kHzあたり(-110dBrA)と13kHzあたり(-115dBrA)に、2つののエイリアシング・アーティファクトがある。25kHzでの主要なエイリアシング信号は-65dBrAの地点であり、その結果として生じる25kHzの基本波をピークとした高調波は、-80〜-70dBrAの近辺である。MINフィルターの挙動はSTDフィルターの挙動と同じである。
注意:各フィルターの特徴は、先述の「全般情報」に記載している。弊誌が測定した周波数レスポンスは、全般にiFi audioの説明と一致している。
THD(全高調波歪率)(unweighted) 対 周波数 対 負荷(24/96)
上図は、コンスタントな2Vrms出力時の周波数領域において、96kHzのサンプリングレートでディザリング処理した入力データで、バランス出力を600Ω(青/赤)、300Ω(紫/緑)、32Ω(ピンク/オレンジ)で計測したTHDを示している。600Ωでは、右チャンネルが左チャンネルよりも明らかに10dBほども優れている。300Ωでは、THDは0.002〜0.003%の間であり、600Ωでは右チャンネルと同じである。6kHzでは、300ΩでのTHDは0.005%付近である。32Ωでは、THDはわずかに高く、0.005%をわずかに下回るか上回るかの間である。
1kHzでのTHD(全高調波歪率)(unweighted) 対 出力(600Ω、300Ω、32Ω)
上図は、1kHzの出力レベルにおいて、96kHzのサンプリングレートでディザリング処理した入力データで、バランス出力を600Ω(青/赤)、300Ω(紫/緑)、32Ω(ピンク/オレンジ)で測定したTHDを示している。50mVrmsほどまでは、3つのデータはどれも0.005%ほどのTHDで推移している。50mVrmsから2Vrms(125mW)ほどの間では、32Ωのデータは0.005%から0.01%の間でかなりフラットである。200mVrmsでは、600Ωのデータと300Ωのデータはなおも接近しており、0.001%をわずかに超える程度である。200mVrmsから2Vrms(13mW)の間では、300Ωのデータは、0.001%から0.002%の間でかなりフラットである。600Ωのデータは、400mVrmsで0.0006%という低さに達し、2Vrms(6.7mW)で0.002%に上昇する。1%のTHDは、7Vrmsを超えたところで600Ω(95mW)と300Ω(177mW)で同じ状態に近づく。32Ωでは、1%のTHDは1Wで5.5.Vrmsを超えたところである。
1kHzでのTHD+N(全高調波歪率とノイズ比)(unweighted) 対 出力(600Ω、300Ω、32Ωでの96kHz)
上図は、1kHzの出力レベルにおいて、96kHzのサンプリングレートでディザリング処理した入力データで、バランス出力を600Ω(青/赤)、300Ω(紫/緑)、32Ω(ピンク/オレンジ)で測定したTHD+Nを示している。200mVrmsほどまでは、3つのデータはどれもTHD+Nが0.015%という、同じような軌跡で推移している。200mVrmsを超えると、32Ωのデータが2Vrmsで0.005%という低さに達するが、300Ωのデータと600Ωのデータはほとんど完璧に同じような軌跡を描き、2Vrmsで0.002%をわずかに超える低さに達する。
相互変調歪 対 ジェネレーター・レベル(SMPTE、60Hz:4kHz、600Ω、300Ω、32Ωで4:1)
上図は、96kHzのサンプリングレートでディザリング処理した-60dBFSから0dBFSまでの入力データで、バランス出力を600Ω(青/赤)、300Ω(紫/緑)、32Ω(オレンジ/ピンク)で測定した相互変調歪率(IMD)を示している。ここではSMPTE IMD測定法を使用しており、一次周波数(F1=60Hz)と二次周波数(F2=7kHz)が、4:1の比率でミックスされている。SMPTE IMDの分析結果は、2番目の変調(F2±F1)から5番目の変調(F2±4×F1)を観測している。600Ωのデータは最高のIMDを生み出しており、-30dBFSで2%から0.06%、-18dBFSで0.3%(左)に上昇し、0dBFSで0.02%ほどに落ちる。300Ωと32Ωのデータは、-30dBFSまで完璧に落ち、そこではIMD率は0.02%である。この位置を超えると、32Ωのデータはフラットになり、0dBFSで0.01%に達する。300Ωのデータは、0dBFSあたりで0.002%に近い低さに達する。
FFTスペクトラム — 1kHZ(0dBFSでの44.1kHzのデータ)
上図は、44.1kHzのサンプリングレートで1kHzの入力サイン波を与えた時の高速フーリエ変換(FFT)で、バランス出力を300Ωで計測したものである。-95dBrA(あるいは0.002%)では第三次高調波が支配的で、第二次高調波は-100dBrAから-110dBrA(あるいは0.001%から0.0003%の)(左右)の間である。結果として生じる奇数次高調波(3、5、7、9kHz)は、-110dBrA(あるいは0.0003%)以下に観察することができる。主要な信号のピークの左方向には、電源のノイズ・ピークは特にない。
FFTスペクトラム — 1kHZ(0dBFSでの96kHzのデータ)
上図は、96kHzのサンプリングレートで1kHzの入力サイン波を与えた時の高速フーリエ変換(FFT)で、バランス出力を300Ωで計測したものである。オーディオ帯域では、上記の44.1kHzサンプリングデータと基本的に同じFFTが観測される。
FFTスペクトラム — 1kHZ(-90dBFSでの44.1kHzのデータ)
上図は、44.1kHzのサンプリングレートで-90dBFS 1kHzの入力サイン波を与えた時の高速フーリエ変換(FFT)で、バランス出力を300Ωで計測したものである。-100dBrAのあたりでノイズフロアが高まり、正しい振幅での主要なピークが観察できる。
FFTスペクトラム — 1kHZ(-90dBFSでの96kHzのデータ)
上図は、44.1kHz〔ただしくは96kHz〕のサンプリングレートで-90dBFS 1kHzの入力サイン波を与えた時の高速フーリエ変換(FFT)で、バランス出力を300Ωで計測したものである。-100dBrAのあたりでノイズフロアが高まり、正しい振幅での主要なピークが観察できる。ノイズフロアは上記の44.1kHzのものと同じである。なぜなら、USB DACとしては、ビット深度は変更することができず、すべてのサンプリングレートで32ビットに保たれるからである。
相互変調歪FFT(18kHz + 19kHzの合成波、44.1kHz)
上図は、44.1kHzのサンプリングレートで18kHz+19kHzの合成サイン波を与えた時の相互変調歪(IMD)のFFTで、バランス出力を300Ωで計測したものである。入力信号のdBFS値は-6.02dBFSに設定されているので、平均周波数の18.5kHzに合成されたら、2Vrms(0dBrA)が出力されることになるだろう。二次変調の値(つまり1kHzの相違信号)が-95/100dBrA(左右)(あるいは0.002/0.001%)であることがわかるが、17kHzと20kHzでの三次変調の値もまた-95dBrAである。
相互変調歪FFT(18kHz + 19kHzの合成波、24/96)
上図は、44.1kHz〔ただしくは96kHz〕のサンプリングレートで18kHz+19kHzの合成サイン波を与えた時の相互変調歪(IMD)のFFTで、バランス出力を300Ωで計測したものである。入力信号のdBFS値は-6.02dBFSに設定されているので、平均周波数の18.5kHzに合成されたら、2Vrms(0dBrA)が出力されることになるだろう。オーディオ帯域内では、上記の44.1kHzのサンプリング・データと基本的に同じIMD FFTを観察することができる。
ディエイゴ・エスタン