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2015年4月1日水曜日

iFI流デジタルフィルター考察 ── アクティブフィルターか、パッシブフィルターか、それが問題だ(パート2)

How to filter digital audio - デジタル・オーディオにどうやってフィルターをかけるか

もしもデジタル・フィルター(これもまたまったくの悩みの種です)をなしにすれば、フィルターを作るためには、予測できる形で周波数に応じて変化する電子パーツが必要になります。

1. シンプルなフィルター - それなりの性能

いちばんシンプルなフィルターは、単一の抵抗をインダクターまたはキャパシターと組み合わせたものです。問題は、このようなシンプルなフィルターは信号とノイズをあまり区別できない点です。信号にはほとんど影響を与えませんが、ノイズに対してもそれほど有効ではないのです。


このシンプルなフィルターで得られるよりももっと信号とノイズを区別できるものが通常は必要になります。

2. パッシブフィルター - 理論的には良いが、実現は容易ではない

ひとつの方法は、多重抵抗をインダクターとキャパシターと組み合わせて使うことです。
これはパッシブフィルターと呼ばれます。

実際にキャパシターとインダクターを用いたフィルターは、100MHzまで効果があります。ですから、イメージだけでなく、スイッチングノイズまで、きわめて高い効果でフィルターをかけることができます。


高品質なインダクターはスペースを取り、コストもかかります。そしてまた、歪みをあまり生じさせないインダクターを見つけ出すのはむずかしいことが多いのです。この方法が今日あまり見られないのは、それが理由です。理想のフィルターにきわめて近いところにまでたどり着き、初期のデジタル装置にはもちろん使用されていたのですが。。。

3. アクティブフィルター - 猫の皮を剥ぐもうひとつの方法

残る方法は、アクティブフィルターを使用することです。この方法では、私たちは抵抗とキャパシターだけを使い、増幅によってインダクターを「シミュレーション」します。これはつまり、フィルター機能を形成するために、アクティブエレメント(素子)の増幅機能に依存するということです。

インダクターを排除する点以外のひとつの鍵となる有利な点は、アクティブフィルターによって設計者は、信号とノイズを区別する能力と、信号へのフィルターの影響の間のどのあたりで折り合いを付けるかについて、非常に大きな自由が得られるということです。

もうひとつ有利な点は、これらのフィルターについては幅広く論じられており、簡単に計算し、モデルを作ることができるということです。


不利な点もあります。一般のアンプのエレメントの大半は、周波数が高くなると増幅機能が低下するということです。多くのオーディオ・オペアンプは、数メガヘルツを超える周波数ではゲインが残りません。ですから、きわめて高い周波数では、フィルターは必要なフィルター機能を果たさなくなるのです。

つまり、こういったアクティブフィルターは、適切なパッシブフィルターよりも容易に、安価に導入することができ、いわゆる「イメージ」にうまくフィルターをかけることができるのですが、同時にまた、DACから生じるスイッチングノイズにフィルターをかけるために苦闘することも多いということなのです。

決断、決断、どうすればいいのか?

結局、様々な要求をどうやって満たすか、そして相容れない要素にどのように折り合いを付けさせるかは、設計者の選択になります。

nano iDSDでは、パッシブフィルターだけに依存していますが、フィルターの信号とノイズを区別する能力はiFiの他のDACほど優れてはいません。
micro iDSD、micro iDAC2、そしてRetro Stereo 50のDACでは、私たちは非常に帯域幅の広いオペアンプを使用して、パッシブフィルターとアクティブフィルターを組み合わせて使っています。

iDSD PROでは、予算とサイズの制約はあまり大きな問題とならないので、フル・パッシブフィルターを使っています。
nano iDSDを(クルマの)BMWのM1と考えれば、micro iDSD/iDAC2はM3、そしてiDSD ProはM5ということになります。

それぞれ値段が違い、エンジンや性能の特徴が様々なユーザーに合わせてあります。

(ついでながら、私たちは社内で独自にコードを開発しながら、(こともあろうに)基板上のXMOSを「リマッピング」して、理論上の「データシート・スペック」を超えさせてしまいました。iFiプラットフォームのQuad-DSD256とOcta-DSD512を見れば、それは明らかです。ですから、私たちのMシリーズは工場バージョンを超えているのです。)

クルマ好きの方々に尋ねられる前に言っておきますが、BMW i8は、AMR用に取ってあるのです。
原文
 

2015年3月31日火曜日

iFI流デジタルフィルター考察 ── アクティブフィルターか、パッシブフィルターか、それが問題だ(パート1)

iDSD Pro(※訳注:これまでmini iDSDとして開発中だった新製品。コンセプトと仕様を変更して2015年度内に発表予定)と増幅段のフィルター回路について興味深い疑問が提起されました。これは複雑なテーマです。

私たちが採った進路と、その背後の理由についてできる限りのことを皆様にお知らせしようと思いますので、ご忍耐ください。
専門的な話がたくさんありますので、なかなかやっかいです。もしも眠れなくなったら、とりあえずここをブックマークしておいてください。

Without further ado… あとはごたごたもなく。。。

そもそもなぜ信号にフィルターをかけるのか?

まず私たちは、DACチップが、望まれるオーディオ信号に加えて、かなりのスープラソニック(超音域)出力(これを「デジタル歪み」と呼んでもいいでしょう/※訳注:日本では量子化ノイズ Quantization Distortion と呼ばれる)を生み出すということを理解しなければなりません。これがどのようなものであるかは、多くの要因によって異なります。すべてのチップを見るのではなく、私たちがiFi製品に使用しているBB(バーブラウン製)DSDチップに絞って見てみましょう。

このチップは、通常11.3MHz~12.3MHzあたりのスピードで動作するコアを持っています。これは非常に高速です。これはコア内のエレメント(素子)がスイッチングする(切り替わる)速度です。スイッチングするわけですから、メインのスイッチング周波数よりもずっと高いところに到達する周波数成分を生み出します。


このスイッチングはオーディオ帯域外でノイズを生み出す過程のひとつであり、他の過程はサンプル理論に関連していて、しばしば「イメージ」と呼ばれるものを生み出します。単純に言えば、実際のオーディオ信号が周波数区間中のサンプリングレートの周囲で「鏡像」として再現されるということです。「ミラーイメージ」という名前の所以です。




オーディオ回路の大半は、そういったスープラソニック信号を処理することはできません。あまりに高速で、オーディオ信号に歪みを生み出すのです。したがって、私たちがどんなDACにも求めるのは、いわば望まれないノイズを「漉して」オーディオ信号だけを残すフィルターなのです。そして、そのフィルターがすべてのノイズを捕まえながら、オーディオにはまったくノータッチというのが理想なのです。

現実の世界には、理想的なフィルターは存在しません。スープラソニック・ノイズを除去するフィルターは、オーディオ帯域に影響を与え、フェーズ・レスポンスの変化あるいはトランジェント・レスポンスの変化のどちらかを、あるいはその両方を招くのです。




私たちは不十分なフィルター(ノイズの多くが通過しすぎてしまう)を慎重に選ぶというスキュラと、オーディオへのフィルターの過度な影響(ノイズの大半にフィルターをかけるが、音楽に多量の歪みを与えてしまう)というカリブディスの間を航海していかなければなりません(訳注/英文の筆者は、「シチリア島とイタリア本土の間にある巨岩にスキュラという怪物が住んでいて、カリブディスと名付けられた大渦の難を逃れるためにこの岩に近づいた船乗りたちを餌食にした」というギリシア・ローマ神話になぞらえてこの文章を書いている)。しかし、ある程度のフィルターをかけなければならないので、私たちはカリブディスの岩で難破したり、スキュラの混沌とした渦に吸い込まれないように(訳注/英文の筆者は、スキュラとカリブディスがそれぞれ何を指すのか、取り違えている)、何とか通過できそうなコースを海図を見ながら決めなければならないのです。

「第2部: デジタル・オーディオにどうやってフィルターをかけるか」に続く