2014年6月2日月曜日

iFIオーディオ主任エンジニア、トルステン博士かく語りき(1)連載インタビュー

アメリカのネット媒体AudioStreamに掲載された、iFI-Audio主任エンジニア、トルステン・レッシュ博士のインタビューを順次掲載します。(翻訳:山本敦)

トルステン・レッシュ博士/2013年秋のヘッドフォン祭(フジヤ・エービック主催)にて

多くの読者はDACやポータブルヘッドホンアンプ、USBパワーサプライ、チューブ・バッファ/プリアンプなど、手頃で良質な製品を展開するiFi Audioについてご存じだろう。我々は同社iFi microシリーズの iDAC(レビュー参照)やiUSB Power(レビュー参照)、アクティヴ・チューブ・バッファプリアンプのiTube(レビュー参照)など数多くの製品をレビューしてきた。

Abbingdon Music Research (AMR)からもアンプ、プリアンプ、スピーカーシステム、ディスクプレーヤー、DACと言った“リファレンス・クラス”の製品群が世に送り出されている。両ブランドの製品開発を担当するチーフデザイナー、Thorsten Loesch(トルステン・レッシュ)氏はPCM 対DSD、人間の聴覚、管球アンプの魅力の核心に迫る、AudioStreamのQ&Aに快く答えてくれた。彼が回答に割いてくれた時間と労力に感謝しつつ、読者の皆様も私と一緒にインタビューを楽しんでもらえたらと思う。


−−−−トルステンさんがHiFi機器の設計に携わるに至った背景を教えていただけますか?

11歳の頃からずっとHiFi機器の設計や組み立てに熱を上げてきました。振り返ればそれより以前からオーディオいじりに興味を持っていて、幼少の頃からいつも音楽に魅了されてきました。

私が旧東ドイツで育った頃、私の家族は部屋の隅の整理ダンスの上にどんと置かれた「Stradivari 3」という名前の、古くて可愛らしい“Dampfradio” (直訳するとSteam Radio)を所有していました(訳注/Steam RadioのSteamは、「蒸気式の」、つまり「旧式の、古くさい」という意味。したがって、Steam Radioは「旧式のラジオ」という意味)。真空管を使用したラジオです。そのラジオに電源が入ると、部屋全体が素晴らしい音に満たされました。私は豊かで、暖かく、ダイナミックな“Dampfradio”の音に引き込まれ、大きなダイアルに書かれたブラザビル、ロンドン、モスクワ、ニューヨーク、北京、ティンブクトゥ、エレバン と言ったエキゾチックな場所の名前に誘惑されたものです。その後、私はこの古いラジオのダイアルに記された、ほとんどの場所を訪れることができたのですが、この話はまた別の機会にしましょう。

東ドイツ製Stradivari 3管球式ラジオ made by Stern Radio Rochlitz

わが家にはまたルイ・アームストロングからオペラ『アイーダ』まで、沢山の素晴らしいLPレコードのコレクションがありました。しかし、使っていたレコードプレーヤーは、小さくて造りの悪い、トップカバーに“薄っぺらく甲高い音の出る”小さなスピーカーが組み込まれたソリッドステート・ユニットの製品でした。私はそのレコードプレーヤーの“薄っぺらく甲高い”音が好きではありませんでした。

私がちょうど小学2年生になって、子供図書館の図書カードを手に入れた頃、小規模だけれどちゃんと選定された図書館のレコードライブラリーから、色々なLPレコードを借りられるようになりました。これが私の音楽の地平を広げてくれました。レコードは充実しているのに、唯一、そのプレーヤーの音質だけが気に入らなかったことをよく覚えています。これが私を悩ませ続けたのでした。

東ドイツ製Ziphona Solid 523 Record Player

私はどうにかして“Dampfradio”を使って、レコードの音楽を聞くことができないものか、試行錯誤しました。簡単にできる方法がなかったので、当時電気工学士だった叔父に聞いてみました。彼はレコードプレーヤーからの出力を、ラジオの入力につなぐための配線を改造する技術を指南してくれ、その信号を伝送するための長いケーブルを作るのを手伝ってくれました。

私はそれから毎日、午後は学校から家まで駆け足で戻り、自宅のレコードを聴いたり、図書館から新しい作品を借りて夢中で聴いていました。キンクス、ジェスロ・タル、ピンクフロイドやビートルズ、そしてヘンデルやバッハたちの音楽を、私はこうして発見したのです。

私はまた、音楽をすばらしくもひどくも響かせることのできるこの技術にも惹かれるようになりました。私は電気工学の本を読み、独学で知識をつけていきました。それはもう、取り憑かれたかのように夢中になったわけで、それはまずかったですね。やがて5年もしないうちに学校の科学技術展で、お手製のHiFiシステムを披露しました。それには、周波数がデジタル表示されるラジオチューナー、6バンドイコライザー付の100Wアンプ、8インチのウーファー、2インチのミッドレンジドーム、1インチのツイーターを搭載した3ウェイスピーカーなどが含まれていました。自分のまさに最初の“オーディオ機器”を、12歳という高齢で(!)やっと作りあげたのだということを、その時はまだほとんどわかっていなかったのでした。

当時、国内(東ドイツ)のHiFiオーディオ産業は、これに匹敵するように見える製品はまったく生産していませんでした。プロフェッショナル用に限られる3ウェイスピーカー、100Wのアンプ、イコライザーといったものなど、なかったのです。ラジオなどは皆、古風なストリング(カーソル)とポインターチューニング仕様のものばかりです。私が作り上げた製品は、ベルリンの中央図書館から取り寄せた西側の雑誌を借りたり、そしてまた米ドルやドイツマルク(どちらも持っていませんでしたけど)で日本から輸入された最新の製品を買うことができる“インターショップ”を訪れたりして得た知識をもとにしているのです。

もちろん、アルミのフロントパネルの成形や、手作業でのドリルとブラシ、ドライ転写のレタリングによるラベル、ほぼ木製のシャーシなど、仕上げは荒っぽいものでしたが、それでも稼働したし、音もかなり良かったと思います。私はこのシステムのために、学校の授業中に回路の設計やフロントパネルのレイアウトのデッサンに時間を費やしてきました。残念なことに、この最初の製品の写真は全く残っていないのですが。

私は見事1等を取り、転げ回るほど大喜びしました。今日になっても、私たちの作った製品が賞を取ったときは同じぐらいの喜びを感じます。

 “サウンドエンジニアとしての技能を活かしてお金を稼げるようになるために、「トーンマイスター(サウンドマスター)」の資格を得るための約2年間のコースを修了しなければなりませんでした。”
後に私は電子工学を勉強し、一時期小さな個人経営のプロオーディオ企業(当時の共産主義体制では珍しいものでした)に勤めました。国営ラジオ&テレビネットワーク用にミキシングデスクを作っている会社でした。サウンドエンジニアとして、いくつかのバンドにも関わり、PAシステムも組み立てられるようになりました。サウンドエンジニアとしての技能を活かしてお金を稼げるようになるために、「トーンマイスター(サウンドマイスター)」の資格を得るための約2年間のコースを修了しなければなりませんでした。

コースのプログラムには、当時私はハードロックにはまっていたのにも関わらず、クラシックのレコーディングを習得しなければならない科目がありました。クラシックのレコーディングはシングルテイク、ミニマルなマイクセッティング、そして取り直し不可。後でミキシングで修正なんてこともできませんでした。スコア(総譜)が読めなければならず、リハーサルに出て、どうやって古いアナログのコンソールでゲイン調整を行うか、専門的な技術を習得しなければなりませんでした。

夜な夜な生演奏に参加しながら、レコーディングとライブ両方のサウンドワークを担当し、それに私が力を注いできたプロのオーディオ設計(それは非常に“職人的”な仕事なので、多くの時間を費やしました)が組み合わさったことによって、私がUltra-Fidelityのオーディオコンポを設計する際に今日までなお拠りどころにしている真の基盤が形成されたのです。その後、私はイギリスへ移住し、コンピューターサイエンスで2級の資格を獲得し、財務コンピューターシステムでのキャリアを開始しましたが、オーディオエレクトロニクスへの情熱は片時も失うことがありませんでした。

Joe Roberts 氏の“Sound Practices”マガジンとの出会い、そしてインターネットの普及の草創期でのメーリングリストを通して、私の管球サウンドへの愛情は復活しました(LPレコードへの情熱を失った事はありませんが)。私はすっかり“Ultra-Fidelity audio”の集団に深く関わるようになりました。欧州人として、ドイツ人として、私はまたフランスの流行にも触れて、スイスや(西)ドイツのオーディオシーンにも囲まれて育ちました。日本の「MJ無線と実験」誌や「ラジオ技術」誌には多大な影響を受けました。電子工学のしっかりした背景と経験を持っていることが役立ったのは、間違いありません。



私自身もレビューや技術論文を、Webマガジンの開拓期に登場してきたTNT-Audio, Enjoythemusic.com そして “VALVE the magazine of astounding sound”などの媒体に、折に触れて寄稿してきました。他の人々が設計を商品化し始めた頃には、私は事実上すでに“オープンソース”のDIYキットを完成品に組み込んで販売するようなことをやっていました。その後、私はハイエンドオーディオのビジネスに引き込まれ、私とパートナーたちでAMRとiFiを始めたのです。(続く)




2014年5月31日土曜日

nano iDSD Beta版ファームウェアをお申込みいただいた方への、メールでのご案内

表題の件につきまして、Beta版ファームウェアお申込みの方に先ほどすべてご案内メールの発送を完了しております。
本日夜半までメール発送が遅れましたことをお詫び申し上げます。

iFI-Audio.JPサポート

2014年5月28日水曜日

nano iDSDのBeta版ファームウェアをお申込み&適用なさった方へ

nano iDSDの正式版ファームウェアが公開される前に、メールでお申込みいただいた方にのみお渡ししていたBeta版(nano_iDSD_v6_5_beta.bin)ですが、これを適用なさった方のnano iDSDに以下のようなバグがあることが判明しております。

1)正式版(iFi_XMOS_v4.0x.bin)にアップデートできない
2)オリジナル(iFi_XMOS_v3.30.bin)に戻せない

上記のバグがありましたことを深くお詫び申し上げるとともに、対応と修正については今週中(31日土曜日)にすべてのお申込みの方にメールでご案内を差し上げます。

なお、非公開のベータ版でなく、公開された正式版を適用頂いたお客様については問題はありません。

以上よろしくお願い致します。

iFI-Audio.JPサポート

2014年5月24日土曜日

nano iDSD、新ファームウェア提供開始!

nano iDSD専用のファームウェアが完成しました。14日に公開した新ドライバー(ver.2.20.0)とあわせてお使いいただくことにより

●DSD256(11.2MHz/12.4MHz)に対応しました。ポータブル分野では世界初となります。
●ASIO2.2にも正式対応(Windowsのみ)従来のDoP方式も平行して使えるので、モバイル・アプリやMac上でもこれまでどおり使えます。
●新ファームウェアでUSB3.0ポートに完全対応しました。新型Mac各機種のUSB3.0ポートとの互換性の問題が解消されました。

ただ、現状ではこのファームウェアはWindowsからしか当てることが出来ないので、Macしかお持ちでない方はブートキャンプ化してWindowsに最新ドライバーを入れてからファームウェアを適用していただくか、または弊社サポートにお手持ちのnano iDSDを送っていただき、ファームウェアのアップデートをご依頼いただくことになります。

ファームウェアURL → http://ifi-audio.jp/ifi-xmos-firmware-upgrade-instructions.html



2014年5月22日木曜日

nano iDSDの3.5mmヘッドフォン・ジャックの品質について

最近、ご質問が多くなっているnano iDSDの3.5mmヘッドフォン・ジャックについて、iFI-Audio主任エンジニア:トルステン・レッシュより正式な回答がありましたので、原文とともに掲載いたします。


Q. 以下のURLにあるサイトでは「ヘッドホンジャックの接触が甘く、GNDの共通インピーダンスが大きくなっていることにより逆相のクロストークが発生。それにより変わった音が出力される。」とありますが、このヘッドホンジャックの接触不良は部品による不良ではないのですか?



A. It is a fundamental feature of 3.5mm connectors to have a fairly high ground impedance (especially when compared to 6.3 mm connectors).
Due to the way many headphones are constructed this leads to increased crosstalk. We cannot credit blanket claims of "strange sounds", the measured results shown on the blog show > 60dB channel separation with 32 Ohm headphones.
For reference, a Stereo LP pickup has < 30dB channel separation at 1 KHz and much less at high and low frequencies. This does not cause "strange sounds".
We would say that the poor channel separation is a fundamental feature of the 3.5mm connector and not specific to the one we use.
However, we will in future change to a SMD connector of higher quality, it may improve the ground connection with marginal headphone connectors (too small diameter) where the current socket may make poor contact.
Also, we are implementing 6.3mm socket where possible - such as with the micro iDSD.
Feel free to give this explanation to customers that 3.5mm is fundamentally limited.


GRDのインピーダンスが(特に6.3ミリジャックと比べた場合)かなり高めなのが、3.5ミリジャックの特徴なのです。
多くのヘッドフォンがこのように製作されているため、クロストークも増すことになるのです。ブログに示されている測定結果は、32オームのヘッドフォンで>60dBのチャンネルセパレーションなのですから、私たちとしては、「変わった音」というのは全面的には信じがたいことです。
参考までに申し上げますと、ステレオLPレコードは、1kHで<30dBのチャンネルセパレーションで、高域と低域ではもっとセパレーションが低下します。それでも、これで「変わった音」が出るわけではありません。
3.5ミリジャックでチャンネルセパレーションが悪いというのは、それが3.5ミリジャクの基本的特徴であるからであり、iDSDが使用している部品に特有の症状ではないと、申しあげなければなりません。
とはいえ、私たちは将来的には、もっと高品質なSMDコネクターに変更しようと思っていますので、そうすれば、最低レベルのヘッドフォンジャック(直径が小さすぎて接触が悪いため、電流が順調に流れない)とのアース接続が改善される可能性があります。
私たちはまた、可能な機種(たとえばmicro iDSD)には6.3ミリジャックも装備しようと思っています。
3.5ミリジャックは、基本的に性能に限界があるのだと、日本のお客様にお知らせください。

iFI-Audio主任エンジニア:トルステン・レッシュ Thorsten Loesch

2014年5月14日水曜日

iFI-AudioのDSD256対応

iFI-Audioは現在発売中のnano iDSD、及び今夏発売予定のmicro iDSDのニ機種をDSD256(11.2MHz、12.4MHz)に対応させることを発表しました。

micro iDSDについては発売時より対応、nano iDSDについては(1)新ファームウェアを当て(2)新バージョンのドライバー2.20(Win用のみ ※Mac OSは必要なし)を使用することにより対応します。

またASIOに対応することにより、DSDネイティブ再生方式をASIO2.2、DoPのどちらかに選択可能となります。


nano iDSDのアップデート詳細手順については今月25日までにこの欄にてお知らせし、今月末までにファームウェアの提供を開始します。