2022年7月29日金曜日

iFi audio ZEN One Signature/SoundStage! Access(2022年6月1日)

本レビューは、世界的なオーディオWebマガジンSoundStage! Accessに掲載されたレビューの日本語訳を、許諾を得て転載するものです。また、iFi audio製品については国内価格表記としております。原文は以下URLよりご覧ください。
https://www.soundstageaccess.com/index.php/equipment-reviews/1197-ifi-audio-zen-one-signature-digital-to-analog-converter
https://www.soundstagenetwork.com/index.php?option=com_content&view=article&id=2773:ifi-audio-zen-one-signature-digital-to-analog-converter-measurements&catid=434&Itemid=577
また、国内において、一般的でない表記については、注釈を〔〕内に記載しております。

 

著:デニス・バーガー(202261日)

 これほど偏った批評をしてしまったことはないと思った。それは、ひとつの記事で始まった。たとえばアナログ接続しかできないシステムにデジタル接続機能を加える、あるいは好みの機器の内蔵DACがネイティブで対応していないフォーマットをサポートできるようにするといったような、特定の用途以外で外付けDAコンバーターを使う必要性に疑問を呈したのである。ブレント・バターワースと私は、「SoundStage! Audiophile Podcast」でのディスカッションでこれを補足し、DACは今や必需品となり、業界ではこの見方がますます広まっていると、基本的に結論づけた。しかし、「unboxing blog post for iFi Zen One Signature 」で言ったように、上記のすべての使用ケースに対応する潜在能力を持ちながらも価格がリーズナブルなDACがあるとすれば、それがこれである。

ZEN One Signatureは、ビット深度とサンプリングレートが32bit/384kHz(動画では間違って192kHzと言ったが)までのPCMデコードにUSB経由で対応する。DSD256もサポートし、MQAをデコードし、BluetoothコーデックAACaptX Adaptive/HD/LLLDACLHDCなど)をすべてサポートしている。光入力と同軸入力も、24bit/192kHz PCM(動画ではこれと混同してしまったのだと思う)、そしてMQAに対応する。 

このDACは、PCMDSDのデコード用にバーブラウンの「トゥルー・ネイティブ」DACチップセットを使用するとともに、クアルコムのBluetoothQCC5100統合回路も使用している。高品質なmuRataPanasonicOS-CONTDKC0G、エルナー社のSilmic IIキャパシター、ビシェイ社のMELF抵抗器を使用している点でも考え抜かれた製品であるが、それはZEN One Signature49,500円(税込)という控えめな価格とは、ちょっと釣り合わないように見えるほどである。 

同軸入出力(RCA)、光入力(TosLink)、USB Bの端子となかなか大きなBluetoothアンテナに加えて、ZEN One SignatureはステレオRCA(ライン・レベル)出力と4.4mmバランス出力も備えているが、これらの主な用途は、このDACiFi audioZEN CAN  Signature HFMアナログ・ヘッドフォン・アンプ(41,800[税込])と組み合わせて使用することだろう。 


これらすべてが、iFi audioZENシリーズに共通の曲線デザインにしたがった流線型のシャーシにくるまれている。とはいえ、このデザインで私がいちばん気に入っているのは、部屋のどこからでも今何をやっているのかが一目でわかる、クリアーな視認性である。たとえば、物理入力を使用していてもBluetooth接続をしていても、中央のiFiのロゴが異なった色で光り、現在どのフォーマットを処理しているかを教えてくれるのである。白色はPCMまたはLDHC、シアン色はDSDまたはLDAC、緑色はMQAまたはaptX Adaptive、青色はMQA Studioまたはまったく標準的なaptXを示し、マジェンタ色は、外部ソース機器がすでにMQAの最初のアンフォールド(展開)を行った後にこのDACMQAレンダラーとして動作していることを示すか、Bluetoothを使っている時にはaptX HDが実行されていることを示すのである。また、もしもライトが点灯していなければ、Bluetooth経由で聞いてはいるが、それは上級コーデックではなく、一般的なSBCであることを示すのである。 

光るロゴの右側に円があるが、これが黄色に光ると44.1/48kHz PCMを意味し、88.2/96/176.4/192/352.8/384kHzPCMを聞いている時には白色、DSD256を聞いている時には赤色になる。こうして見ると覚えなければいけないことがたくさんあるように見えるが、実際には私はすぐに理解できた。おそらくは、私はTidalをサブスクリプションしておらず、MQAファイルも持っておらず、DSDもめったに聞かない(とはいえ、ZEN One Signatureのテスト時には聞いたが)からかもしれない。 

電源ボタンと入力セレクター・ボタンのそばには、煩わしいコントロール・ボタンは一切ない。ZEN One Signatureは純然たるDAコンバーターであり、増幅もしなければボリューム・コントロールもなく、イコライザーもない。とにかくこの種のものは何もない。そのすべてが、セットアップに関しては何も話すことがないということを意味しているのである。しかし、話しているのはこの私である。ということは、それほどシンプルな話ではなかったということである。 


iFi audioZEN One Signature DACをセットアップする 

通常なら、こういったZEN One Signatureのような製品を私のPCと現在使用しているプリメインアンプ(RotelA12MkIIだが、まもなく製造元に返却の予定)の間に接続して、おそらくは見ればわかるボタンなどの機能をあれこれ論じるという、ストレートな過程を辿ることになるのだろうが、ここで私は、セットアップの最初から間違ってしまい、それがうれしい偶然となったことを告白しておく必要がある。 

通常なら、私はハイファイ・システムに接続されたDACUSBで電力を供給することなど、考えもしないだろう。なぜなら、私のMaingear Vybe PC〔ゲーミングPC〕は、システム中で電源コンディショナーのSurgeXに接続されていないからであり、また、PCからのUSB電源はそもそも汚染しているからである。これまでこういったシステムで私のPCUSB接続して給電を試したほぼすべてのDACは、例外なく多少ノイズがあり、音がざらざらとして粗かったのである。 

そういうわけなので、私はユニットの背面にMonoprice Monolith #33464 USB ABのケーブルを引っ張っていった後に(付属のUSBケーブはなかなかよくできているが、私のシステムでは少し短いのである)、付属の電源コードをDACの背面に接続し、それからSurgeX XR115に接続したと、誓って言っただろう。そうしたのをはっきりと覚えているから、指切りしてもいいと〔実際にはUSBケーブルでPCDACを接続しただけだったという意味〕。 

 

それから数日して、私が本気で試聴している時に、ZEN One Signatureの入っていた箱を置いていたオットマンを見ると、どうも箱の中に入っていたのではないかと思われる電源ブロック〔iPower II〕に初めて気付いた。やっちまったと思い始めた。そう、ユニットの背面を急いでチェックすると、私は汚染したUSB電源で駆動していることがわかり、ぞっとしたのである。 

しかし、ここがポイントだ。私が付属の電源を接続して試聴を再開すると、まったく違いが感じられなかったのである。そこで私は、電源ケーブルを抜いて、USBケーブルをPCから安物のパワードUSBハブに接続しなおしたのだが、それでも意味のある違いは感じられなかった。 

これはどういう意味だ? ノイズを抑えるためにiFiがしていることはどれもがユニットのパフォーマンスに大きな影響を与えるのだということが示されたということだと、私は思ったのだった。そこで私は偏見をすべて捨てて、この電源ブロックを使わないことに決め、ZEN One Signatureの試聴をすべてUSB電源で行うことにした。これによって、現在私がWirecutter〔製品批評のウェブサイト〕のためにやっているテスト用に、電源をひとつ余計に使うことができるようになったのである。

※訳注:ZEN One SignatureUSBバスパワーでも動作しますが、基本的にiPower IIの使用を推奨します

 

物理的な接続やWindows用のUSBドライバーをインストールすることを別にすれば、セットアップには他には大した作業はない。DACには選択可能なフィルターは付いていないが、これはMQAレンダラーだけでなく、MQAデコーダーも装備した結果だろう。とはいえ、この点に関しては、私のこの推理は引用しないでいただきたい。操作の点で言えば、ZEN One Signatureは置けばそのまま使えるといった感じが強く、日々の使用に関して唯一不満があるとすれば、USBBluetoothの接続を切り替えるのに、フロントパネルの入力選択ボタンを押さなければならないことである。 

 

iFiZEN One Signatureはどんなサウンド? 

Bluetooth機能が搭載されていることは先述した。というのも、ZEN One Signatureの試聴の最初の数日は、先述したWirecutterの記事用に数多くの単体Bluetoothレシーバーと比較するための基準として、主としてこれを使ったからである。私はまた、このZEN One SignatureBluetoothデコーディングとRotelA12MkIIの同機能を比較することにも、かなりの時間を割いている。 


単刀直入に言えば、RotelBluetooth受信とZEN One Signatureのそれとの間には予想以上に大きな違いがあったが、すべてはZEN One Signatureがより高度なコーデックをサポートしていることに起因しているのだと結論づけることはできないと思っている。ライル・ロヴェットの「She’s Already Made up Her Mind」(アルバム名:Joshua Judges Ruth16ビット/44.1kHz FLACCurb Records/Qobuz)のようなトラックでは、デリケートなシンバルの炸裂やアコースティック・ギターのアタックの違いを聞き取ることができた。また、高域にはより味わい深い輝きがあり、それに伴って空間感が増し、サウンドステージやイメージも改善されたのである。 

ZEN One Signatureについていえば、そのBluetooth出力はクリーンで静かであり、ハイファイ装置に組み込まれたBluetoothで時折体験する奇妙な動作(信号がないと自動でミューティング状態になる、トラックを移動すると不気味なポップ音がするなど)もまったくない。驚くにはあたらないだろうが、私が候補に挙げた単体のあらゆるBluetoothレシーバーの中で、アナログ接続と同じくらい良い音がしたのは、iFi audioZEN BlueZEN Air Blueだったが、AudioengineB1も、光出力を使った時と、Rotelの内蔵DACと一緒に使った時には、価格の割にはなかなのものだった。 

だが、この批評はSoundStage!なので、iFiBluetooth機能を気にかける人はほとんどいないだろう。ということで、私は急いでUSB入力に切り替えて、じっくりと試聴し、これとA12MkIIUSB DACとを頻繁に比較することにした。私はこの2つの機器の間に何か意味のある違いがあるかを聞き取るために奮闘したのだが、ZEN One Signatureを軽視しているとは解釈しないでいただきたい。A12MkIIDACの音はすばらしいものなのである。 

もちろん、Zen One Signatureは、Rotelの内蔵DACよりも大きな利点を持っている。すなわち、世の中のあらゆるデジタル・フォーマットをサポートしているということである。DSDをサポートしているので、デイヴィッド・チェスキーのニューアルバム「Graffiti Jazz」(The Audiophile Society AS5)のALACバージョンとDSFバージョンを、そして何よりスピーカーミックスを比較するチャンスを得た(このアルバムは、ヘッドフォンミックスとスピーカーミックスが個別に収録されており、DSDフォーマットと、24/4824/192までのPCMフォーマットで聞くことができるようになっているのである)。 

フォーマット間の意味のある比較をすることは、予想以上にむずかしいことがわかった。JRiver Media Center(私がDSD再生用に選択したソフトウェアである)がALACのファイルとDSDのファイルをきわめて異なる音量レベルで再生するからである。しかし、レベル合わせに最善を尽くしたところ、それらの間には気にするほどの、あるいはブラインドテストで確認できるほどの違いはなかった。とはいえそれでも、ミュージック・サーバーをいじくりまわしながら見つけたDSDレコーディングにアクセスすることができるのは、うれしいことである。 

フォーマットの比較はしばらく脇に置いて、「Graffiti Jazz」を使ってZEN One SignatureDA変換に焦点を絞ると、頭に浮かぶ唯一のことばは、「申し分ない」である。このアルバムのトラック5、「Graffiti Jazz No.5」(スピーカーミックス)と適切な題名の付けられた曲で、ZEN One Signatureは、その最初の音からきわめて能力の高いDACであることを証明し、チェスキーのヴァーチャル楽器の精確なアタックと音の減衰を、反論の余地のない精緻さとすばらしい強弱で聞かせてくれたのである。30秒あたりのところで、チェスキーが超ウェットなリバーブを、ミックス中の効果と追加楽器の中間のような感じで使うのだが(キーボードの音の間の空間を満たし、それらの音と相互作用するのだが、まったく対等の関係というわけではない)、それが、すばらしく深い空間感と、壁から壁へと広がる高さ3フィートといった感じのサウンドステージ(このうれしいほど奇妙なアルバムとそのワイルドなミックスの効果をフルに味わいたいと思えば、これはきわめて重要である)によって、美しく表現されるのである。 

深く掘り下げたいと思って最後にもう一度聞いてみたが、これは論争になることがわかっていた。必要があると思えば、読み進んでいただきたい。Rotel A12MkIIの批評の中で、私はルイス・テイラーの仕事、特にアルバム「Stoned, Pt. I」の大ファンだと書いたが、私はまた、そのアルバムのオンライン・ストリーミング用の音源は、各トラックの開始部分で、奇妙なポップ音があるので、オリジナルのCD(あるいはそれの古いAIFFリッピング)でアルバムを聞くことにしているとも書いている。しかし、どういうわけか、ZEN One Signatureでの最後の試聴の間は、私はJRiverの迷路のようなメニューを掘り下げる気にもならず、ディスク・プレーヤーを接続することもなく、Qobuzでアルバムを聞き、ポップ音は我慢しようと決心したのだった。 

テイラーのカタログの多くはQobuzで提供されているが、「Stoned, Pt. I」は提供されていなかった。Spotifyでは提供されているのだが(私はこれをスマートフォンで持ち歩いている。そしてSpotifyのすばらしいファミリー・プランによって、妻と娘とプレイリストを共有することができるのである)。うれしいことに、このアルバムが、ポップ音なしで再アップロードされた。Qobuzでも同じことが起こっていたのだろうと思う。 

いずれにせよ、こういったことにまつわるSpotifyへの抵抗があったので、私はこのアルバムに関するDACのパフォーマンスの印象を批評には入れないように計画していた。ところが私は、ZEN One Signatureの「Positively Beautiful」(320kbps OGG VorbisSlow Reality/Spotify)の再生にあまりに感激したので、それをここに収録しなければならなくなった。このトラックのミックスは、チャンネル・セパレーションがきわめて優れた、低歪みの機器でしか、その効果をフルに引き出すことができない。ファンキーなオルガンと、レーザーのように焦点の合った、ワーワーと鳴るギターのリフは言うに及ばず、この曲はきわめて静かに開始され、マルチトラック収録されたヴォーカルがきわめて濃密に、しかし繊細に、そしてパーカッションが精緻に再生されるのである。 

ビットレートのことは忘れよう。解像度のことは忘れよう。このストリーミング・サービスでこの歌を扱うこのDACに関して言えば、不満はゼロである。豊かで、細部まで見通すことができ、適切にダイナミックだったのである。イメージの正確さは称賛すべきもので、サウンドステージは三次元的で、トランジェント・レスポンスは、私の耳で聞く限り、幻覚かと思うほどドンピシャである。

 

この価格帯の他のDACは見るに値するのか? 

入出力とフォーマットのサポートの点では、これに近い競合製品はToppingD50s、人気の高いD50のアップグレード・バージョンである。249ドルの価格を考えると装備が充実しており、ZEN One Signatureとほぼ同じフォーマットをサポートしているが、Bluetooth入力はLHDCコーデックをサポートしていない。D50sはまた、iFiのようなバランス出力も装備していない。 

D50sは自分ではテストしておらず、また、ToppingDACで実際に手に取った経験があるのは、価格の安いE30である。しかし、そのE30でも、USB給電とSurgeX経由の給電との違いをはっきりと聞き分けることができた。一方、ZEN One Signatureでは、そういった違いは聞き取ることができなかった。したがって、ここに考えるべき点があることになるが、それは使用しているシステム次第である。 

大雑把にこのクラスで私が好きなもうひとつのDACが、Schiit Audio199ドルのModiusである。この製品にはXLR出力とRCA出力が装備されており、バランス出力とシングルエンド出力はそれぞれ独立したステージになっているが、DSDはサポートされず、MQAのデコード機能もない。さらに、Schiit Unison USBインターフェースは、UAC-2互換のソースにしか対応しておらず、Windows 10以前のバージョンやMacOSX 10.7 Lion以前のバージョンでは動作しない。 

 

長いから読みたくない? — では要約を:iFi audioZEN One Signature DACは購入すべきか? 

こう書くのは悩ましいことで、読者の皆様も悩ましいかもしれないが、私に言えるのは、私はこの批評用のサンプルを購入するつもりだということである。そう、これはライターが批評を締めくくるいちばん陳腐な方法であることはわかっているのだが、実のところ私はアナログ入力だけの製品を時折批評することがあり、すべてのいかなるデジタル・フォーマットもデコードすることのできる優良なDACが必要なのである。 

ZEN One Signatureはこれができるばかりか、これがうまくできるのである。しかも、私のシステムに簡単に取り込むことのできる小ぎれいな形状をしている。ひとつだけ変えることができるとしたら、オート・ソース・センシング〔ソースを自動的に判別してくれる機能〕を加えるだろう。そうすれば、入力選択ボタンをいじくることなくスマートフォンからBluetoothオーディオをストリーミングすることができるからである。しかしそれはおそらく、この価格の製品に対しては過大な要求ということになるだろう。 

iFi audioは、あなたが必要とするのはこのDACだけだと大胆なことを言っている。読者のみなさま全員の代弁をすることはできないが、私の場合は、これが実話となってしまった。

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iFi ZEN One Signature DAコンバーター

各種測定結果 

全般情報

すべての測定はAudio PrecisionAPx555 Bシリーズ・アナライザーを使用して行っている。 

iFi audioZEN One Signatureは、測定を行う前に0dBFS2.1Vrms出力)、100kΩで30分間稼働の状態にしている。 

ZEN One Signatureには4つのデジタル入力が装備されている。同軸S/PDIFRCA)×1、光S/PDIF×1USB×1Bluetooth×1である。ラインレベルの出力が2系統(3.4mm TRRSバランス〔正しくは4.4.mm〕とRCAアンバランス)、デジタル出力が1系統(同軸。同軸デジタル入力として使用するRCAコネクターと兼用)が装備されている。比較は、24/960dBFS入力を使用し、ラインレベルのアンバランス出力とバランス出力の間で行った。バランス出力の方が電圧が6V高い点を除けば、THD+N(全高調波歪+ノイズ)とダイナミックレンジには実質的な違いはない。入力タイプ(USB、同軸、光)に関して言えば、THD+Nには違いがない。 

特に述べている箇所を除いて、すべての測定は同軸デジタル入力とアンバランス出力で行っている。

 

公表されている仕様 対 弊誌の一次測定 

下の表は、iFi audioZEN One Signatureのものとして公表している測定値と、弊誌が自ら行った測定値を直接比較した要約である。公表されている仕様はiFiのウェブサイトから直接引用したり、ダウンロード可能なマニュアルを引用したり、外箱に表示されているものを引用したり、それらを組み合わせたりしたものである。Audio Precisionの帯域が最大(DC1MHz)に設定されている周波数レスポンスを除いて、特に述べている場合以外は、同軸デジタル入力(0dBFS 24/96 1kHzのサイン波)、100kΩ(ラインレベル)に設定したアンバランス・ラインレベル出力を前提として、10Hz90kHzの測定用の入力帯域、そして左右チャンネル間の最悪の測定結果を使用している。 

Parameter

Manufacturer

SoundStage! Lab

Output impedance (BAL/UnBAL)

<72/36 ohms

73/37 ohms

Output voltage (0dBFS, BAL/UnBAL)

4/2Vrms

4.3/2.1Vrms

Frequency response (24/192)

5Hz-80kHz ±3dB

5Hz-80kHz, -0.07/-2.7dB

Signal-to-noise (A-weighted, 1kHz, 24/96@0dBFS)

105dB

106dB

THD+N (1kHz, 24/48@0dBFS, 10Hz-22.4kHz BW)

<0.002%

<0.0023%

弊誌の一次測定では、同軸入力とアンバランス・ラインレベル出力を使用して以下のことが明らかになった(特定していない場合は1kHzのサイン波を0dBFS100kΩの負荷、10Hz90kHzの帯域で使っている)。 

Parameter

Left channel

Right channel

Crosstalk, one channel driven (10kHz, 16/44.1)

-98.7dB

-87.6dB

Crosstalk, one channel driven (10kHz, 24/96)

-98.8dB

-87.7dB

DC offset

<-0.18mV

<-0.06mV

Dynamic range (A-weighted, 16/44.1)

95.7dB

95.5dB

Dynamic range (unweighted, 16/44.1)

91.9dB

92.0dB

Dynamic range (A-weighted, 24/96)

106.4dB

106.6dB

Dynamic range (unweighted, 24/96)

97.5dB

97.8dB

IMD ratio (CCIF, 18kHz + 19kHz stimulus tones, 1:1, 16/44.1)

<-85dB

<-85dB

IMD ratio (CCIF, 18kHz + 19kHz stimulus tones, 1:1, 24/96)

<-73dB

<-74dB

IMD ratio (SMPTE, 60Hz + 7kHz stimulus tones, 4:1, 16/44.1)

<-88dB

<-83dB

IMD ratio (SMPTE, 60Hz + 7kHz stimulus tones, 4:1, 24/96 )

<-88dB

<-79dB

Maximum output voltage (0dBFS)

2.13Vrms

2.12Vrms

Output impedance (BAL)

72.9 ohms

73.1 ohms

Output impedance (UnBAL)

36.9 ohms

37.6 ohms

Noise level (A-weighted, 16/44.1)

<38uVrms

<37uVrms

Noise level (unweighted, 16/44.1)

<60uVrms

<60uVrms

Noise level (A-weighted, 24/96)

<17uVrms

<17uVrms

Noise level (unweighted, 24/96)

<40uVrms

<40uVrms

THD ratio (unweighted, 16/44.1)

<0.0016%

<0.0021%

THD+N ratio (A-weighted, 16/44.1)

<0.0025%

<0.0029%

THD+N ratio (unweighted, 16/44.1)

<0.0033%

<0.0035%

THD ratio (unweighted, 24/96)

<0.0016%

<0.0032%

THD+N ratio (A-weighted, 24/96)

<0.0020%

<0.0037%

THD+N ratio (unweighted, 24/96)

<0.0025%

<0.0037%

  

周波数レスポンス(16/44.124/9624/192 

上図は、ZEN One Signatureのサンプリングレート機能としての周波数レスポンスを示している。青/赤の線は、5Hz22kHz16ビット/44.1kHzのディザリング処理したデジタル入力信号を表している。紫/緑の線は、5Hz48kHz24/96のディザリング処理したデジタル入力信号を、そしてオレンジ/ピンクは、5Hz96kHz24/192を表している。低域での挙動は、3つのサンプリングレートのすべてで同じであり、基本的に5Hzに至るまで完璧にフラットである。3つのサンプリングレートの高域での挙動は、予想どおり、22kHz48kHz96kHz(それぞれサンプリングレートの半分)あたりでフィルターされている。各サンプリングレートの-3dBの点は、ざっと言って、それぞれ21.1kHz46.2kHz83kHzである。また、この図を見ればはっきりとわかるように、サンプリングレート44.1kHzの入力信号では、「ブリック・ウォール」タイプの挙動を示している。その一方で、96kHz192kHzの入力信号では、コーナー周波数(48kHz96kHz)近辺でもっと穏やかである。上のグラフと以下のほとんどのグラフでは線が1本しか見えないが、これは左チャンネル(青、紫、オレンジの線)が右チャンネル(赤、緑、ピンクの線)とまったく同一の動きをしており、両方が完璧に重なっているからである。つまり、2つのチャンネルは理想的な一致を見せているということである。 

 

デジタル・リニアリティー(16/44.124/96のデータ) 

上図は、同軸デジタル入力(光入力と同じ端子)の16/44.1(青/赤)と24/96(紫/緑)でのリニアリティー・テストの結果を示している。アンバランス・ラインレベル出力で測定している。デジタル入力は、-120dBFSから0dBFSまで、ディザリング処理された1kHzの入力信号で流されており、出力はAPx555で分析している。理想的なレスポンスは、0dBでまっすぐでフラットなことである(つまりデジタル入力の振幅が、測定されたアナログ出力の振幅と完璧に一致するということである)。24/96のデータは、-120dBFSの地点でわずか-1dBであるが、16/44.1のデータは-100dBFSまで完璧であり、-120dBFSではわずか+2.5dB(左)である。これはすばらしい結果である。 

 

インパルス・レスポンス 

上図は、ループの24/44.1のテスト・ファイルを示している。1サンプリング中にデジタル・サイレンスからフル0dBFS(オール「1」)まで動き、再びデジタル・サイレンスに戻るというものである。典型的なsinc関数のレスポンスであることがわかる。 

 

J-Test(同軸入力) 

上図は、ZEN One Signatureのアンバランス・ラインレベル出力で同軸デジタル入力をテストしたJ-Testの結果を示している。J-Testは、1990年代にジュリアン・ダットンが開発したもので、48kHz24ビット)で(今回は)サンプリングした、-3dBFSのディザリング処理していない12kHzの矩形波のテスト信号である。12kHzの矩形波の最初の奇数調波(すなわち36kHz) がサンプリングレートの帯域制限で除去されても、12kHzのサイン波(主要なピーク)が残っている。さらに、-144dBFSでのディザリング処理していない250Hzの矩形波が、信号と混ざっている。このテスト・ファイルでは、最下位22bitが常に切り替わるようになっており、その結果、250Hzで、そしてまたその奇数調波で、強力なジッター・スペクトラル成分が生まれている。このテスト・ファイルは、このDACと伝送インターフェースがどの程度ジッターの影響を受けるかを示している。このジッターは、500Hz間隔(すなわち250Hz750Hz1250Hzなど)のノイズフロアの上にピークとして現れるのである。潜在的なピークはテスト・ファイル自体の中にあるが、それは奇数調波の場合は144dBrA250Hzで基本)から-170dBrAのレベルであることに注意していただきたい。このテスト・ファイルはまた、Audio Precisionによって人工的に投射されたサイン波ジッターとともに使用して、このDACがいかに見事にジッターを防いでいるかを示すこともできる。 

同軸S/PDIF入力は、-130dBrAで最悪のピークを示すが、これはZEN One Signatureがジッターに対して敏感ではないということを示しているのである。 

 

J-TEST(光入力)

S/PDIF入力も基本的には同軸入力と同じ結果を示している。同軸入力も光入力も、J-TESTファイルに人工のサイン波ジッターを2kHzで投射して(すなわち10kHz14kHzで側帯波として現れる)、ジッターへの免疫性をテストしている。ジッターへの免疫性が並外れていることがわかる。1000nsというジッター・レベルでさえ側帯波が確認できないのである。 

 

ホワイト・ノイズと19.1kHzのサイン波トーンの広帯域FFTスペクトラム 

上図は、ZEN One Signatureの同軸デジタル入力に16/44.1(紫/緑)のサンプリングレートで-4dBFS(青/赤)でホワイトノイズを、0dBFS19.1kHzのサイン波を与えた時の、アンバランス・ラインレベル出力の高速フーリエ変換(FFT)を示している。ホワイトノイズ・スペクトラムの20kHzより上での鋭い減衰は、「ブリック・ウォール」タイプのローパス・フィルターが実行されていることを示している。オーディオ帯域には、いくつかのエイリアシング・アーティファクトがあり、17kHz -110dBrAでいちばん顕著である。主要なエイリアシング信号は25kHzでの-80dBrAであり、その結果として生じる25kHzの高調波は、25kHzのピークレベルをわずかに超えている。 

 

THD(全高調波歪率)(unweighted) 対 周波数 対 負荷(24/96 

上図は、同軸入力における周波数特性の機能を、ディザリング処理した24/96 信号を用いて、アンバランス・ラインレベル出力を100kΩ(青/赤)と600Ω(紫/緑)で測定したTHDを示している。30Hzから5kHz程度までで、100kΩで左右のTHDのバランスの乱れがある。左チャンネル(青)の方が右チャンネル(赤)よりもほぼ10dBほども優秀なのである。600Ωでは、左右のTHDの違いはもっとずっと小さく、約3dBである。全般的に、600Ωの方に高いTHDが観察される。低域でざっと0.005%から、20kHz0.04%に及んでいる。これは、100kΩのデータに比肩できる。0.001%(左チャンネル、100-300Hzから)という低さから、20kHz0.04%に及ぶのである。 

 

THD(全高調波歪率)(unweighted) 対 周波数 対 サンプリングレート(16/44.124/96 

上図は、同軸入力における出力電圧の機能を、16/44.1(青/赤)と24/96(紫/緑)のディザリング処理した1kHzを用いて、アンバランス・ラインレベル出力を100kΩで測定したTHDを示している。すべてのデータが近接し、THD率は20Hz0.002%100-300Hz0.001%に低下、そして20kHz0.04%に上昇している。例外は24/96の右チャンネルで、100Hzから500Hz程度までTHD10dB近くも高くなっている。 

 

1kHzでのTHD(全高調波歪率)(unweighted) 対 出力(16/44.124/96 

上図は、同軸入力における出力電圧の機能を、16/44.1(青/赤)と24/96(紫/緑)のディザリング処理した-90dBFSから0dBFSまでの入力データで、アンバランス出力を100kΩで測定したTHDを示している。低い出力レベルでは、24/96の方が16/44.1のデータよりも優秀であり、THD0.2-0.3Vrms1.5%から0.0005%近くであるが、16/44.1のデータは1Vrms4%から0.001%である。低い入力レベルでのTHDの大きな食い違いは、24/96のデータのもともと低い24ビットのノイズフロアによるものであるということを強調しておくことが重要である(つまり、FFTで信号の高調波が観測されない時は、THD値は、ノイズフロアが許容する限り低く割り当てることができるということである)。0.4Vrms程度の出力電圧では、ここでも右チャンネルの方が左チャンネルよりも高いTHDを持っているのがわかる。 

 

1kHzでのTHD+N(全高調波歪率とノイズ比)(unweighted) 対 出力(16/44.124/96 

上図は、同軸入力における出力電圧の機能を、16/44.1(青/赤)と24/96(紫/緑)のディザリング処理した-90dBFSから0dBFSまでの入力データで、アンバランス出力を100kΩで測定したTHD+Nを示している。24/96の方が16/44.1のデータよりも優秀であり、THD+N30%から0.003%であるが、16/44.1の方は2.1Vrmsの最大出力電圧で40%から0.004%である。 

 

相互変調歪 対 ジェネレーター・レベル(SMPTE60Hz4kHz4:116/44.124/96 

上図は、同軸入力にジェネレーターを用いて16/44.1(青/赤)と24/96(紫/緑)のディザリング処理した入力データで、-60dBFSから0dBFまでのアンバランス出力を100kΩで測定した相互変調歪率(IMD)を示している。ここではSMPTE IMD測定法を使用しており、一次周波数(F160Hz)と二次周波数(F27kHz)が、4:1の比率でミックスされている。SMPTE IMDの分析結果は、2番目の変調(F2±F1)から5番目の変調(F2±4×F1)を観測している。24/96の方が16/44.1のデータより優秀であり、IMD-150dBFSの間で0.5%から0.0003%に及んでいるが、ここでもまた、右チャンネルの方が、これらの高いジェネレーター・レベルでは成績が悪い(10dB近く)。16/44.1のデータは、0dBFSでの2.1Vrmsの最大出力電圧で、2%から0.005%の範囲であり、-10dBFSより上では左チャンネルの方が右チャンネルよりもわずかに優秀である。 

 

FFTスペクトラム — 1kHz(デジタル入力、0dBFSでの16/44.1のデータ) 


上図は、1kHzの入力サイン波を与えた時の高速フーリエ変換(FFT)で、16/44.1のサンプリングレートでの同軸デジタル入力に対してアンバランス出力を100kΩで計測したものである。-95dBrA(あるいは0.002%)での第二次高調波と、それに続く、-100dBrA(あるいは0.001%)から-120dBrA(あるいは0.0001%)へと下がっていく高調波(3kHz4kHz5kHz7kHzなど)が観察できる。主要な信号のピークの左方向には、電源のノイズ・ピークは特にない。
 

 

FFTスペクトラム — 1kHz(デジタル入力、0dBFSでの24/96のデータ) 

上図は、1kHzの入力サイン波を与えた時の高速フーリエ変換(FFT)で、24/96のサンプリングレートでの同軸デジタル入力に対してアンバランス出力を100kΩで計測したものである。右チャンネルの信号高調波のピークが左チャンネルのピークよりも5-10dB高いのが一貫して観察できる。左チャンネルの信号高調波のピークは、16/44.1(前項の図)で計測したものと基本的に一致する。主要な信号のピークの左方向には、電源のノイズ・ピークは特にない。 

 

FFTスペクトラム — 1kHz(デジタル入力、-90dBFSでの16/44.1のデータ) 

上図は、1kHzの入力サイン波を与えた時の高速フーリエ変換(FFT)で、-90dBFSでの16/44.1のサンプリングレートでの同軸デジタル入力に対してアンバランス出力を100kΩで計測したものである。正しい振幅での主要なピークを観察することができ、オーディオ帯域内のノイズフロアより上には信号高調波はない。 

 

FFTスペクトラム — 1kHz(デジタル入力、-90dBFSでの24/96のデータ) 

上図は、1kHzの入力サイン波を与えた時の高速フーリエ変換(FFT)で、-90dBFSでの24/96のサンプリングレートでの同軸デジタル入力に対してアンバランス出力を100kΩで計測したものである。正しい振幅での主要なピークを観察することができ、オーディオ帯域内の3kHzの箇所に-140dBrA(あるいは0.00001%)という非常に低い信号高調波のピークを感じさせる部分がある。 

 

相互変調歪FFT18kHz 19kHzの合成波、16/44.1 

上図は、18kHz19kHzの合成サイン波を与えた時の相互変調歪(IMD)のFFTで、16/44.1での同軸入力に対してアンバランス出力を100kΩで計測したものである。入力信号のdBFS値は-6.02dBFSに設定されているので、平均周波数の18.5kHzに合成されたら、2.1Vrms0dBrA)が出力されることになるだろう。二次変調の値(つまり1kHzの相違信号)が-90dBrA(あるいは0.0003%)をわずかに下回っていることがわかるが、17kHz20kHzでの三次変調の値はわずかに高く、-85dBrA(あるいは0.0006%)であることがわかる。 

 

相互変調歪FFT18kHz 19kHzの合成波、24/96 

上図は、18kHz19kHzの合成サイン波を与えた時の相互変調歪(IMD)のFFTで、24/96での同軸入力に対してアンバランス出力を100kΩで計測したものである。入力信号のdBFS値は-6.02dBFSに設定されているので、平均周波数の18.5kHzに合成されたら、2.1Vrms0dBrA)が出力されることになるだろう。ここでもまた、左チャンネルに比較して右チャンネルの方が歪のピークが5dBほど高いことがわかる。その他の点では、FFTは基本的には上記の16/44.1IMD FFTと同じである。 

ディエイゴ・エスタン