2017年4月26日水曜日

Pro iESL正式版、29日からのヘッドフォン祭で世界初披露!



来る29日より開催される「春のヘッドフォン祭2017」において、下記の製品の最終量産型デモ機を試聴展示することになりました!ぜひトップウイングCSGブース(中野サンプラザ15Fリーフルーム)にご試聴にお越し下さい。STAX、KingSound、ゼンハイザーなどお手持ちの静電型ヘッドフォンをお持ち込みいただくのも大歓迎!
以下が現時点での正式なご案内です。

  • 製品名:Pro iESL
  • 製品ジャンル:エレクトロスタティック(静電)型ヘッドフォン用トランス結合エネザイジャー(Electrostatic Headphone Trasformer-Coupled Energiser)
  • 内容:エレクトロスタティック型ヘッドフォン用の「エナジャイザー」(エネルギー供給源)モジュール
  • 接続: Pro iESLは単体でヘッドフォンアンプとして成立するものではなく、エレクトロスタティック型ヘッドフォンを通常のヘッドフォン用及びスピーカー用のアンプで使用できるようにする機器です。 iFi AudioのPro iCANと独自規格のリンクで接続するように設計されていますが、通常のヘッドフォンアンプ、及びプリメインアンプのスピーカー出力端子と接続しても鳴らすことができます。


主な特徴:

  1. 前述の通りiFiの独自規格ESL-Link(HDMIケーブルによる)を使用することで、Pro iCANを「親機」としてiESLに接続してエレクトロスタティック型ヘッドフォンを使用できるようになります。
  2. すべての標準的なヘッドフォンアンプと「親機」としてアナログ接続してエレクトロスタティック型ヘッドフォンを使用することも可能です。なお「親機」として接続するヘッドフォンアンプは4ピンバランス・ヘッドフォン出力付きの製品が最も好ましく、ヘッドフォンアンプが十分なパワーと出力電圧を持っていることが必要です。
  3. すべてのスピーカー用アンプ(プリメインアンプまたはボリュームを搭載したパワーアンプ)を「親機」として、スピーカー端子から信号を受けてiESLと接続し、エレクトロスタティック型、ダイナミック型、プラナー型のヘッドフォンを使用できるようになります。なおスピーカーを使う場合はOutの出力端子でスルーアウトが可能なため、いちいち接続をやり直す必要がありません。
  4. キャパシティブ・バッテリー電源を搭載、あらゆるACノイズやスイッチング・ノイズを除去します。
  5. 調節可能なACターミネーター:Pro/Normal/Off
  6. カスタム・バイアス調節可能:230(Normal端子6ピン)、500-640V(Custam/Pro端子5ピン)
  7. 負荷インピーダンス調節可能:16Ω-96Ω


  • 発売時期:6月頃を予定
  • 販売価格:未定(判明次第お知らせします)


※バイアス電圧値:

  • 230V(Normal)            旧型のStax ESHP
  • 500V(Custom)            Sennheiser Orpheus HE-90
  • 540V(Custom)            Sennheiser HE-60、KingSound KS-H2/3/4
  • 580V(Pro)                  Stax Pro Bias ESHP
  • 600V(Custom)            Koss ESP/950、Jade
  • 620V(Custom)            将来用の予備値
  • 640V(Custom)            将来用の予備値



なお、Pro iESLは昨年10月のRMAFを皮切りに、日本の冬のポタフェス、今年のシンガポールにおけるCAN-JAMなどで一部機能が動作しないプロトタイプの展示が行われましたが、完成版の製品展示は今回のヘッドフォン祭が世界初となります。

以下はiFi Audio本社から届いたマニュアル資料を抜粋・翻訳したものです。

●エレクトロスタティック型ヘッドフォンについてのメモ

エレクトロスタティック型ヘッドフォンを動作させるには非常に高い電圧が必要です。たとえばStaxの場合は、一般の低能率のフルサイズのヘッドフォンが105dB/1Vなのに対して、101dB/100Vという数値になっています。さらに、Staxの製品は「バイアス電圧」(現代のStax製品では通常580V)も必要とします。
Pro iESLは、6ピン端子に接続されたStaxのエレクトロスタティック型ヘッドフォンに対してはオリジナルの(通常の)230Vのバイアス電圧を、5ピン端子に接続されたStaxのエレクトロスタティック型ヘッドフォンに対しては500V~600V(調節可能)のバイアス電圧を、そしてさらにStax Proには専用の580Vのバイアス電圧を供給することができます。他の多くのメーカー製のエレクトロスタティック型ヘッドフォンにも、Staxの5ピン・プロ端子用のアダプターを使えば、対応することができます。 Pro iESLでは500-640Vまで様々なバイアス設定を試してみることができます。ユーザーが好むバイアス設定を切り替えられるのです。

また、Pro iESLはPro iCANと独自規格のリンクを使用することで最適化しています。エレクトロスタティック型ヘッドフォンの大半は低能率です。電圧に制限があり、感度も低いため、エレクトロスタティック型ヘッドフォンは一般に大音量で鳴らすことができません。特に、伝統的なダイナミック型ヘッドフォンと比較すると、これが顕著になります。Pro iCANとPro iESLを組み合わせて使用すると、インピーダンス・コントロールの設定によって、320V RMS(910V PP)から640V RMS(1820V PP)までの電圧を引き出すことができます。
これらは非常に高い電圧なので、エレクトロスタティック型ヘッドフォンの定格電圧の限界を超える可能性があるため、ユーザー自らエレクトロスタティック型ヘッドフォンの許容電圧を確認する必要が生じます。もしも少しでも疑問がある場合は、インピーダンスを高めに設定して使用すれば安全ではあります。Pro iESLのインピーダンスが64Ω~96Ωに設定されていさえすれば、保護回路が働くこともなく、どのようなエレクトロスタティック型ヘッドフォンも損傷することはないはずです。

●Pro iESLの設計について

原理的には、エレクトロスタティック型ヘッドフォン用のエナジャイザーというのは些細なチャレンジに過ぎません。必要なのは、エレクトロスタティック型ヘッドフォン用に非常に高い信号電圧を生み出す一組のトランスと、何らかの形態のバイアス供給装置だけだからです。とはいえもちろん、シンプルに見えるものの背後には思いもかけない複雑さが潜んでいるのが常です。
たとえば、20Vのオーディオ信号を、歪率の低い、フラットな周波数特性を持った、不快な共鳴のない640Vの信号に変換することのできるトランスを作るというのは、大変なチャレンジなのです。へたをすると、サウンドに色づけが生じてしまいますが、これはエレクトロスタティック型ヘッドフォンのクリスタルのようにクリアーなサウンドにとってはとりわけ大きな問題となります。
また、高電圧のバイアス供給装置を作るのは簡単に見えますが、このバイアス電圧がヘッドフォンのダイアフラムを動かす力の一部になるのだということを忘れてはいけません。バイアス供給装置に少しでもノイズがあれば、振動するダイアフラムを駆動する力が変動し、そのためサウンドにも影響が出るのです。これは明らかに避けなければなりません。
高電圧が関係するので、回路基板の設計のような些細な作業も、チャレンジとなります。こういった高電圧を制御できなくなるような事態は絶対に避けなければならないからです。したがって、電圧の伝送経路とピンの間にはスペースをたっぷり取ることが必要になり、これによってシンプルな回路基板のレイアウトが突然大きなチャレンジとなってしまうのです。
次に、各スイッチから長期使用における信頼性に至るまで、音質への影響が最小限になるように、多様な要素を確実に選別する必要があります。シンプルなメカニカル・スイッチでは、これは実現できないのです。

●トランス

エレクトロスタティック型ヘッドフォンに必要とされる高電圧を生み出すために、Pro iESLはカスタムメイドの最高品質のトランスを使用しています。
このトランスの性能を決定づけることになる芯の部分は、超薄のGOSS(方向性電磁鋼板)とピンストライプ(細かい縦縞)のパーマロイ・ラミネーションを組み合わせたハイブリッド仕様になっています。芯をGOSS 100%にすると、ローレベルでヒステリシスが生じ、これによって静かなパッセージに歪みが生じてしまいます。一方、パーマロイ100%の芯にすると、ハイレベルにどうしても大きな歪みが生じます。ところが、これら2つの素材を組み合わせると、それぞれが最高の状態で動作することが確保されます。こうして、伝統的な芯(GOSSであろうと、アモルファス鉄であろうと、あるいはこれらと同様の素材であろうと)と比較すると、歪みが劇的に減少するのです。
過度な共鳴や帯域制限なしに高いステップアップ率と素性の良さを組み合わせるために、私たちのトランスは垂直及び水平方向に複雑なマルチセクションの巻き方を採用しています。私たちが要求するパフォーマンスを生み出すには、きわめて細いワイヤーを精確にぎっしりと巻かなければならないのです。
この複雑な巻き方と並外れた芯材の組み合わせによって、あらゆるレベルで歪みがなく、そしてまたオーディオ帯域をはるかに超えた領域でも色づけのない、完全にフラットな周波数特性を持ったトランスが生み出されるのです。
こういった並外れたトランスによってのみ、私たちはトランスレスの最良のアンプのパフォーマンスに近づき、さらにそれを超えることさえできるのです。

●バイアス・システム - キャパシティブ・バッテリー電源

一般にバイアス電圧は、50/60Hzの家庭用電源で生み出され、いわゆるグライナッヘル(またはヴィラール)・カスケード整流回路(コッククロフト=ウォルトン電圧増幅回路と呼ばれることもあります)が用いられます。この回路は、一般的な、安価な部品を使って非常に高い電圧を生み出すことができますが、その動作音は非常にうるさいものです。
使われているACの周波数が低いと、大きな容量を持ったキャパシターが必要になる傾向があります。通常は、ノンリニア電気キャパシターが必要になるのですが、これはリーク電流(漏洩電流)が多いので、バイアス電圧が下がるのを防ぐためにカスケード整流回路が常に稼働している状態を保たなければなりません。
iFiはこういった既存のソリューションをすべて完全に捨て去ろうと決心しました。
まず私たちは、 バイアス電圧を供給するために、多重パラレル・フィルム・キャパシターのバッテリーを使おうと決心しました。フィルム・キャパシターは、充填をほぼ無限に保持します。エレクトロスタティック型ヘッドフォンの絶縁抵抗もきわめて高いので、電流が流れてキャパシター・バンクが放電されるようなことはありません。したがって、キャパシター・バンクを一度公称バイアスまで充填しておけば、充填されたキャパシター・バンクをバイアス電圧のところで「フロート」させておくことができるのです。
このワンタイム充填を実現するために、私たちは非常に高い周波数(約750kHz)のスイッチング・システムを用いています。このシステムは、完全にシールドされた小さなトランスと、新種の超高速高電圧整流回路を使っています。さらに重要なのが、このシステムはキャパシター・バンク内に適正なバイアス電圧が確立されると直ちにシャットダウンするという点です。
たとえ空気を通してでもわずかな放電は起こるので、キャパシター・バンクを30秒程度ごとに補填する必要がどうしてもあります。この過程は通常は100万分の数秒(数マイクロセカンド)しかかかりません。というのも、通常は失われた充填を再補填するには、1つあるいは2つのスイッチング・サイクルで十分だからです。
このシステムで生じるいかなるノイズも、それが発生している短時間(めったにありませんが)の間は、中波無線帯域に制限されます。その時間の99.999%以上の間、充填回路は完全にOFFになっています。
結果として生まれたのが、エレクトロスタティック型ヘッドフォンにバイアスを供給するための完璧な高電圧バッテリーです。完全に分離された、独立した2つのバイアス回路が用いられています。1つは230Vの「ノーマル」バイアス用、そしてもう1つは、現代の様々なエレクトロスタティック型ヘッドフォンに対応できる、調節可能なバイアス用です。

●シグナル・ルーティング
入力選択用の信号スイッチングの全体は、内部に不活性ガスを充填した、金メッキのシルバー・コンタクト・ミニチュア・リレーを使っています。これによって、接点が長年にわたって新品のままのような状態であることが確保されます。
スピーカーの接続は、密閉したシルバー・アロイ・コンタクト・リレーを使ってスイッチングされているので、スピーカーの信号経路の音質への影響が最小に抑えられています。

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