micro iPhono 3 Black Label
フォノステージはフォノプリアンプ、またはフォノイコライザーとも呼ばれ、レコード・カートリッジ/ピックアップ(レコード針)とアンプの間に接続します。ターンテーブルに取り付けられているカートリッジの信号出力は微細なので、アンプで扱えるようにするにはオリジナルの数百倍まで増幅する必要があります。フォノステージは、信号レベルをミリボルトからボルトに増幅する役割を果たすのです。プリメインアンプやプリアンプの中にはフォノステージを内蔵しているものがありますが、これらは品質が様々で、巧みに設計された外付けフォノステージ(ターンテーブルとアンプのライン・レベル入力の間の信号チェーンに設置します)と同等の音質を持っていることはけっしてありません。真剣にターンテーブルを使おうという人にとっては、セパレート型のフォノステージは必須なのです。
開発に数年をかけたiFiの新しいフラッグシップ・フォノステージmicro iPhono3 BLは、あらゆるMC/MMカートリッジ、あらゆるレコードに合わせて最適の数値を設定できるようになっています。性能と対応幅の広さで、ミドル〜ハイクラスのフォノステージの中で独自の存在となっており、もっとずっと高価な機器にも十分に対抗できます。
MC か MMか?
ターンテーブルのカートリッジ(スタイラス部分)には2つのタイプがあります。MM = Moving Magnetと、MC = Moving Coilです。
MCカートリッジでは、スタイラスのカンチレバー上にコイルが取り付けられ、マグネットは固定されています。そこでは、固定されたマグネットの内側の可動(振動する)コイルが微細な電磁力を発生させる役目を果たし、これが音楽の電気信号を生み出します。コイルがスタイラスと一緒に動くということです。
MMカートリッジでは、スタイラスのカンチレバー上にマグネットが固定されています。スタイラスが音溝をトレースすると、カートリッジ内の2つの固定されたコイルの間でマグネットが振動します。固定されたコイルの内側の可動(振動する)マグネットが微細な電磁力を発生させる役目を果たし、これが音楽の電気信号を生み出します。マグネットがスタイラスと一緒に動くということです。
どっちが優れているの?
きわめて簡潔に言うと、オーディオファイルはMCカートリッジを好む傾向があります。その方が高いパフォーマンスが得られるからです。MCカートリッジの方がより精確に音溝をトラッキングすることができるのです。サウンドもよりダイナミックになります。MCカートリッジは高価なものが多く、正しく動作させるにはターンテーブルの精確な、ノイズを抑えたセットアップが必要になります。
MMカートリッジは、普及価格帯のターンテーブルに付属していることがよくあります。通常はMCカートリッジよりも安価で、ターンテーブルをそれほど精確にセットアップする必要がありません。iPhono3 BLは、MCでもMMでも見事な結果を生み出します。
iPhono3 BLのセッティングはちゃんとできる?
問題ありません。私たちが特別に開発した「iPhono Calculator」を、以下のウェブサイトでご参照ください。
https://bit.ly/iFiiPhonoCalculator
奇妙なEQカーブ
すべてのLPレコードが同じように制作されているわけではないのです。
LPレコードのプレスには、様々なEQ(イコライゼーション)カーブが用いられています。
1948年にLPレコードが導入された時、レコード会社の大半はそれぞれ独自のEQカーブを使用し、この新しいメディアから最高のパフォーマンスを引き出すためにイコライゼーションの実験を続けていました。その結果、様々なEQカーブが世界中で使用されることになったのです。
1950年代中頃になって、大半のレコード会社がRCAのオーソフォニック(Orthophonic)・イコライゼーション・カーブを採用しました。これがアメリカ・レコード協会(Recording Industry Association of America = RIAA)によって採用され、「RIAAイコライゼーション」として知られることになったのです。
ところがこれは、基本的にアメリカの標準カーブでしかなかったので、アメリカ以外にはほとんど影響がありませんでした。RIAAカーブがほんとうの意味でやっと国際標準になったのは、ヨーロッパのレコード・レーベルが徐々にRIAAカーブを採用し始めた、1970年代中〜後期になってからなのです。アジアのレコード・レーベルのいくつかがこの流れに乗ってRIAAカーブを採用したのは、さらに後のことでした。1989年のベルリンの壁の崩壊までは、東ヨーロッパ(ロシアを含む)のレコード・レーベルの多くは、独自のCCIRイコライゼーションを使用していたのでした。
RIAAカーブを使用すると多くの会社が合意した後も、多くのレコード・レーベルが、1970年代に至るまで独自のイコライゼーション・カーブを使い続けていました。たとえば、アメリカのColumbiaやヨーロッパのDecca/Telefunken/Teldecがそうです。
これを救うのがiPhono3 BLです
これを念頭に置いて、私たちはiPhono3 BLが6つのいちばん一般的なEQカーブに対応するように開発しました。意図したとおりのEQカーブでレコーディングを精確に「矯正」することができるのです。
なぜiPhono3 BLか?
- iFiのClass A TubeStateエンジンとDirectDrive Servoless設計。
- ゲイン、負荷、EQカーブの設定範囲の広さによって、接続されたフォノカートリッジとレコードに精確に適合。
- 超低歪み、クラスをリードするダイナミックレンジ。
- 超低ノイズフロア − 「もっとも静かな」フォノステージのひとつです。細部がすべて聞こえます。
- 倍の価格のハイエンド・フォノステージに匹敵する72dBのハイゲイン。
- スリムなシャーシの両側に接続端子を配置。片側にMM/MC入力端子、反対側に電源入力端子とライン出力端子。
テクノロジー
典型的なフォノステージと違い、iPhono3 BLの回路はダイレクト・カップリング方式になっています。つまり、カートリッジから出力に至る経路にカップリング・キャパシターがないということです。しかもこれを、伝統的なDCサーボなしで実現しているのです。iFiはこの設計をDirect Drive Servolessと呼んでいます。DCゲインを無限に近いレベルにまで高めることのできる、専用のDC Infinity回路を取り入れているのです。これによってiPhono3 BLの明瞭さ、精確さ、透明性に、聴いてはっきりわかる違いが生まれるのです。
Class A TubeState
TubeStateは、真空管回路のきわめて魅力的な音の鍵となる特性を超低歪みを維持しながら獲得することを目指して設計された、ソリッドステート回路です。鍵となるのは、真空管のサウンドを「模倣」した高調波歪みをソリッドステート内で再現するのではなく、音質を損なう他のタイプの歪みを回避することです。すべてが歯切れ良くクリアに響き、しかも音楽が誇張されているという感じがまったくない状態が生まれなければならないのです。
ユニットの底面に備えられているDIPスイッチで、ゲインと負荷を設定することができます。ゲインは36dB〜72dBの範囲で調節することができ、負荷の数値も幅広く選択することができます。MCカートリッジ用に8つ、MMカートリッジ用に5つの数値を備えているのです。さらに、必要とする精確なEQカーブを選択することもでき、反ったレコードに対処してさらに優れた周波数レスポンスを得るための一連の設定も可能です。
LPレコードと推奨されるEQカーブ
以下にどのLPレコードにどのEQカーブを適用したよいかを提案します。
だれもが入手したいと思うこれらのレコードをマジカルに再生するには正しいEQカーブが必要であるということに、幾分か光が与えられるでしょう。
- オリジナルのMercury Living Presenceシリーズ:Decca FFSS, Decca FFRR EQ
- オリジナルのDGクラシック・レコード:Decca FFSS, Decca FFRR, CCIR EQ
- オリジナルのマイルス・デイヴィスのレコード:Columbia EQ
- Verveジャズのチャーリー・パーカー、カウント・ベイシー、エラ・フィッツジェラルド、ニーナ・シモン、ライチャス・ブラザーズなどのレコード:Columbia & AES EQ
- オリジナルのデイヴ・ブルーベック・カルテットのレコード:Columbia EQ
- Decca(ヨーロッパ)のオリジナル・ステレオ・レコードのかなりのアイテム:Decca FFSS, Decca FFRR EQ
- すべてのレコード(ノイマンやウェスタン・エレクトリックのレコード・カッティング・マシンを含む)で高域のロールオフと極端な位相シフトを修正したい時:eRIAA EQ
このリストに掲載しているレーベルは、RIAA EQベースのレコードも数多く発売しています。
LPレコードと推奨されるEQカーブ
簡易ながら「おいしい」要約を。
- Columbia(1980年以前のレコード):Columbia/CBS、Epic、EMI(オリジナルがColumbiaから発売されたもの)の大半に適合。
- RIAA:1980年代以降に発売されたすべてのレコード及び1950年代以降に発売された一部のレコードの標準EQカーブ。
- Decca(1980年以前のレコード):Decca、London、Deutsche Grammophon(DG)、Archiv、EMI、Argo、NAB、その他の大半に適合。
ヒント
- RIAAのEQカーブを用いた時に、LPレコードのサウンドが明るすぎる、きつすぎる、痩せている、スケール感や豊かさが不足していると感じられたら、DeccaのEQカーブを試してみてください。
- LPレコードのサウンドが明るすぎると同時に低音が強すぎて濁ると感じられたら、ColumbiaのEQカーブを試してみてください。
仕様
- 周波数特性:10Hz – 100KHz (±0.3dB)、20Hz – 20kHz (±0.2dB)
- ダイナミック・レンジ:MM (36dB): > 108dB (A-weighted)、MC (60dB): > 106dB (A-weighted)
- S/N比:MM (36dB): > 85dB (A-weighted re. 5mV)、MC (60dB): > 85dB (A-weighted re. 0.5mV)
- オーバーロードマージン:MM (36dB): > 26dB (re. 5mV, @ 1% THD)、MC (60dB): > 22dB (re 0.5mV, @ 1% THD)
- クロストーク:<-71dB (1KHz)
- 最大非歪出力:7V (Load >= 600 Ohm, THD <=1%)
- 全高調波歪(THD):<0.005% (MM 36dB 1V out 600R Load)
- 出力インピーダンス:<100Ω
- 入力電力:AC 100 – 240V, 50/60Hz
- 消費電力:< 5W(iPower15v付属)
- 寸法:158 x 58 x 28 mm
- 重量:265 g
- バーコード:5060738780914
- 標準的な小売価格:138,000円(税別)
- 発売日:2020年9月18日