iFi GO blu
あなたの音楽にビッグなことをしてくれる超小型DAC&ヘッドフォンアンプ
評決 ★★★★★
携帯性を最優先するなら、iFi GO bluはスマートフォンに必要とされる音のアップグレードをあらゆる点で利便性をもって実現してくれる。
+ 長所
細部まで見通せる広大な音楽再生
有線接続及び無線接続の両方に対応
バランス入力及びアンバランス入力の両方に対応
− 短所
ビットレートが表示されない
現時点ではベストな買い物
過去6ヶ月の間に、iFiはこの雑誌の輝く5つ星を2点の製品で、そして「What Hi-Fi? 2021年度賞」を1点の製品で獲得している。2012年に発足した会社としては、悪くないことである。イギリスのオーディオ製品は、通勤通学の移動時やデスクトップで使用するのに適した、大半が小型の、常に好感度の高い、時にはヒップフラスク〔ズボンのポケットに入れることのできる携帯用の酒容器〕形状の機器の市場を自ら切り開いたが、iFiのDAC&ヘッドフォンアンプGO
bluも、酒容器というよりも高級ライターのように見えるプロモーション用の写真を別にすれば、その例外ではない。
売り文句によると、このポータブルDAC&ヘッドフォンアンプは、音源機器とBluetooth 5.1で接続することができるので(とはいえ、ヘッドフォンはBluetooth対応ではなく、ユニットに有線で接続する必要がある)、かさばってもつれてしまうこともよくあるスマートフォンのケーブルから、DACやヘッドフォンに接続するケーブルを1本取り除くことができる。ではそれはサウンドの面から見て、美しいものなのか、それともクリスマスのソックスに入れるためだけのかわいい贈りものにすぎないのか?
まもなくそれが明らかになるだろう。
価格
29,700円
(税込
)という値段で新しいワイヤレス接続機能が付いているという点でいえば、
iFiの
GO bluにはそれほど多くの競合製品は存在しないが、そういった競合製品の好例となるのが、「
What Hi-Fi?2019年度賞」を獲得した
Audiolabの
M-DAC Nano (£149, $199)である(とはいえ、搭載しているのは、ちょっとばかし古い
Bluetooth4.2のチップセットだが)。他には、
AudioQuestの
DragonFly Cobalt (£269)がある。スマートフォンやノートパソコン用の、ノイズのない
USBプラグイン
DACである。が、言うまでもなく、これはワイヤレス製品ではない
…
作り
GO bluを手に取る前に写真を見ていたとはいえ、実際に箱から取り出して実物を見た時には、これ以上ないほど驚いてしまった。プロモーション用の写真以外には大きさを比べるものがなかったので、
iFi GO bluの大きさは、たとえば
Astell & Kernの
Kann Alphaといったポータブル音楽プレーヤーを規準にサイズを示せばうまくいくだろうと考えたことを、許していただきたい。そういった製品を想像して、そのサイズの
5分の
1に縮小すれば
OK、つまり
GO bluは、ほんとうに小さいのである。その設置面積は、イギリスの郵便切手を
2枚横に並べたものよりわずかに大きいという程度である。重さもたったの
26g、単3電池よりも軽いのである。
サイズは小さいが、iFi GO bluは強力な魅力を持っている。まず気付くのが、右上部の角にあるロータリー・ダイアルである。これはクリック音がするようになっているので安心できる。回せばボリュームをコントロールすることができ、押せば、再生、ポーズ、トラックのスキップ、スマートフォンのボイス・アシスタントへのアクセスなど、様々なことができる。サイズが小さいので、このダイアルは高級クロノグラフ時計の竜頭のように見えるが、この見ための美しさを引き立てているのが、軽量のソフトタッチのポリマーを使った前面プレートである。どう見ても銅のような感触だが、信号をブロックする金属とは違い、Bluetoothの受信に有利な材質である。私たちが唯一不満を感じているのは、黒いゴムのようなケースワークである。これがあるために、ちょっとちゃちな感じがするのである。特に、軽いのでテスト中にヘッドフォン・ケーブルに引っ張られて机から落ちる傾向があり、それを床から拾い上げなければならないことが何度もあった時には、そう感じたのである。
ボリューム・ダイアルの下には、設定とBluetooth機能のボタンがあり、これを押すことで様々なサウンド・エフェクトを切り替えることができる。XBass、XSpace、その2つの組み合わせ、その両方の無効化である。このボタンを押すと、GO bluの上にあるLEDが点灯するようになっている。黄色はXBassが有効、ライト・ブルーはXSpaceが有効、白はその2つが有効であることを示し、点灯しない時はどの機能も使っていないことを示すのである。
このLEDの隣には、バランス・ヘッドフォン用ジャックとアンバランス・ヘッドフォン用ジャックが装備されているので、(Audiolab M-DAC Nanoを使用する場合と違って)選択した有線ヘッドフォンが贅沢なペンタコン4.4mm出力仕様であろうと、もっと一般的な3.5mm仕様であろうと、どれでも使用することができる。しかも、iFi独自のS-Balance回路が全体にわたって使われているのである。
ユニットの左側には、専用の電源ボタンが装備され、底面にはマルチ用途のUSB-Cポート(これについては後述する)、そして工場出荷時の設定に戻すための小さなリセット・ボタン(これを押すにはピンのようなものが必要である)が装備されている。バッテリーの状態を表示するLEDも装備されている。バッテリーは10時間まで使用できる。緑の場合は良好、黄色になると充電を考えた方がよく、赤色になると充電が必要である。充電には、最大で40分かかる。最後に、チップ・ベースのCMOS-MEMマイクロフォンも装備されているので、ハンズフリーの電話、ゲーム中の会話、Apple SiriやGoogle Assistantなどを含むボイス・アシスタントへのアクセスも可能である。
先述のUSB-Cポートに話を戻そう。というのも、興味深いことに、これは充電専用ではないからである。オーディオ入力を兼ねているので、音源機器からのUSB接続が可能になるのである。この方法でGO bluに接続すると、24-bit/96kHzまでのハイレゾPCMファイルがサポートされているので、Bluetooth接続しかできないAudiolabのM-DAC Nanoとの差別化がかなり生じることになる。以上が簡単な紹介だが、なかなか印象的である。
特徴
GO bluはBluetooth5.1をサポートしているが、現在使われているBluetoothのオーディオ・フォーマットもすべてサポートしている。AptX HD、aptX Adaptive、aptX Low Latency、LDAC、LHDC、AAC、そしてごく一般的なSBCである。
iFiがまず指摘するのは、GO bluはBluetooth、DAC、アンプの各ステージをそれぞれ個別に独立したブロックとして設計しているということである。このサイズとタイプの機器としてはユニークなことであるという。その心臓部にあるのがシーラス・ロジックの32-bit DACチップ「43131」であるが、有線接続(これを使うとPCMで最大24-bit/96kHzで出力することができる)を使用しない場合は、Bluetoothストリーミングが音楽の解像度に影響を与えることを覚えておくことが重要である。
GO bluのXBass、XSpace、そしてそれらを組み合わせたサウンド・エフェクトによって音質をカスタマイズすることはできるが、もしも好みの機能をひとつだけ選べと言われたら、私はAudiolabのM-DAC Nanoが提供している(16bitからの)32-bit SRCアップスケーリングを可能にする機能を選ぶだろう。GO bluは、ストリーミングの音質を向上させてはくれるが(これについては後述する)、その仕様を詳しく述べるのはむずかしく、またこの機器にはアップスケールされたビットレートを表示するLEDも装備されていない。
アンプ機能については、このiFiのモデルは、Grado SR80x(£130 ($125/AU$179)といったオープンバック型のヘッドフォンを大音量でドライブするのに何の問題もないことがわかっている。
ペアリングは簡単である。iPhoneに接続する際は、ペアリングに成功したら音で確認することができ、聞いているオーディオ・ファイルのタイプを音声で知らせてくれる(シンプルに「AAC」のように知らせてくれる)。同様に、MacBook Proには、USB-C→USB-Cケーブル(所有していない場合は購入しなければならないが)を使用して、パソコン上でサウンド出力をGO bluに設定することで、物理的に接続することができる。接続方法にかかわらず、音質を確実に向上させることを容易にしてくれる、巧妙でバーサタイルな設定方法である。
サウンド
Tidalでジョン・メイヤーの「Shouldn’t Matter But It Does」を選択し、似たものどうしの比較という形で、Audiolab M-DAC NanoとiFi GO blu(サウンド・エフェクトは使用していない)の両方とiPhoneをBluetoothでペアリングした。ほぼ直ちに、iFiのGO bluの方が音場が広いことに気付いた。ギターが感受性豊かに掻き鳴らされ、中央のメイヤーの声が歯切れ良く、感情がこもっている。時折、心地良い高域でキーボードが火花を散らし、ソフトで歩くようなベース・ギターが、ローエンドも抑え気味であることを思い起こさせてくれる。直接の比較では、M-DAC Nanoの方が低域がわずかにパンチが効いているが、同時に少しむき出しの感じが強く、わずかながら抜けが悪いように感じられる。
GO bluに戻り、コフィー(Koffee)の「West Indies」をストリーミングすると、出だしのところで左から聞こえてくるバイブラフォン風のキーボードが、明晰さと熱さをもって忠実に伝えられているのに気付く。ビートが衰えると、音場が両耳に拡がり、ほんとうに深い低域まで届く。M-DAC Nanoも同様にニュートラルでクリアーだが、セパレーションと強弱の感度では同レベルとは言えない。とはいえ、違いはわずかではあるが。
Farruko and Gallegoの「167」は、フリーウェイ167を走り去るオートバイと車のサウンドで開始される。iFiのGO bluでこれを聞くと、アーティストが意図したとおりの寂しさで、まるでプエルトリコのフリーウェイ167沿いをヒッチハイクしているかのように感じられる。車が1台ずつ、片方の耳からもう片方の耳へと走っていく。Audiolabの製品は、この感覚をこれと同等の精確さで表現することはできない。ホーン、哀愁に満ちたキーボード、深みのあるスペイン語のボーカルはエキサイティングだが、GO bluは分別も備えている。トラックが進むにつれて、レゲトン・ラップに必要とされるバイト(刺激)をちょうど良い程度に加えるのである。
評決
音質を改善してくれる
DACの議論をする時には、
Bluetoothは何かと物議を醸すことになる。真にハイフィデリティなサウンドを求めようとすれば、
WiFiや有線で聞く場合の音質に
Bluetoothが追いついていないという逃れられない事実があるからである。しかしながら、携帯性を最優先し、利便性を鍵とするならば、現時点では
iFi GO bluに勝るものはない。ほんのわずかの努力で、ポケットがちょっと重くなるだけで、あるいはまた財布にちょっと負担がかかるだけで、スマートフォンのサウンドが向上するのである。ジーンズの小さな時計用ポケットに入れることができ、スマートフォンの近くに置かなくても良い仕事をしてくれる。カフェで仕事をする場合でも、フラットホワイト〔エスプレッソ、スチームミルク、フォームミルクを
3層に重ねた飲み物〕の隣で並外れてすばらしい見た目と音を提供してくれるのである。大いに推薦したい。
スコア
・サウンド 5
・特徴 5
・作り 4
・iFi audio GO blu