2015年3月31日火曜日

iFI流デジタルフィルター考察 ── アクティブフィルターか、パッシブフィルターか、それが問題だ(パート1)

iDSD Pro(※訳注:これまでmini iDSDとして開発中だった新製品。コンセプトと仕様を変更して2015年度内に発表予定)と増幅段のフィルター回路について興味深い疑問が提起されました。これは複雑なテーマです。

私たちが採った進路と、その背後の理由についてできる限りのことを皆様にお知らせしようと思いますので、ご忍耐ください。
専門的な話がたくさんありますので、なかなかやっかいです。もしも眠れなくなったら、とりあえずここをブックマークしておいてください。

Without further ado… あとはごたごたもなく。。。

そもそもなぜ信号にフィルターをかけるのか?

まず私たちは、DACチップが、望まれるオーディオ信号に加えて、かなりのスープラソニック(超音域)出力(これを「デジタル歪み」と呼んでもいいでしょう/※訳注:日本では量子化ノイズ Quantization Distortion と呼ばれる)を生み出すということを理解しなければなりません。これがどのようなものであるかは、多くの要因によって異なります。すべてのチップを見るのではなく、私たちがiFi製品に使用しているBB(バーブラウン製)DSDチップに絞って見てみましょう。

このチップは、通常11.3MHz~12.3MHzあたりのスピードで動作するコアを持っています。これは非常に高速です。これはコア内のエレメント(素子)がスイッチングする(切り替わる)速度です。スイッチングするわけですから、メインのスイッチング周波数よりもずっと高いところに到達する周波数成分を生み出します。


このスイッチングはオーディオ帯域外でノイズを生み出す過程のひとつであり、他の過程はサンプル理論に関連していて、しばしば「イメージ」と呼ばれるものを生み出します。単純に言えば、実際のオーディオ信号が周波数区間中のサンプリングレートの周囲で「鏡像」として再現されるということです。「ミラーイメージ」という名前の所以です。




オーディオ回路の大半は、そういったスープラソニック信号を処理することはできません。あまりに高速で、オーディオ信号に歪みを生み出すのです。したがって、私たちがどんなDACにも求めるのは、いわば望まれないノイズを「漉して」オーディオ信号だけを残すフィルターなのです。そして、そのフィルターがすべてのノイズを捕まえながら、オーディオにはまったくノータッチというのが理想なのです。

現実の世界には、理想的なフィルターは存在しません。スープラソニック・ノイズを除去するフィルターは、オーディオ帯域に影響を与え、フェーズ・レスポンスの変化あるいはトランジェント・レスポンスの変化のどちらかを、あるいはその両方を招くのです。




私たちは不十分なフィルター(ノイズの多くが通過しすぎてしまう)を慎重に選ぶというスキュラと、オーディオへのフィルターの過度な影響(ノイズの大半にフィルターをかけるが、音楽に多量の歪みを与えてしまう)というカリブディスの間を航海していかなければなりません(訳注/英文の筆者は、「シチリア島とイタリア本土の間にある巨岩にスキュラという怪物が住んでいて、カリブディスと名付けられた大渦の難を逃れるためにこの岩に近づいた船乗りたちを餌食にした」というギリシア・ローマ神話になぞらえてこの文章を書いている)。しかし、ある程度のフィルターをかけなければならないので、私たちはカリブディスの岩で難破したり、スキュラの混沌とした渦に吸い込まれないように(訳注/英文の筆者は、スキュラとカリブディスがそれぞれ何を指すのか、取り違えている)、何とか通過できそうなコースを海図を見ながら決めなければならないのです。

「第2部: デジタル・オーディオにどうやってフィルターをかけるか」に続く

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