2015年3月3日火曜日

11.2MHzを聞こう 第4回:世界中の11.2MHzの音源紹介(Eudora Records)

 
●レーベル:Eudora Records
●アーティスト:Ricardo Gallen
●アルバム名:ソル / ギター・ソナタ集
●配信URL:https://eudora.nativedsd.com/albums/fernando-sor-guitar-sonatas
●曲数:10曲 1時間15分
●価格:23.14ユーロ
●ファイルサイズ:圧縮時8GB 展開時11.8GB  (ステレオの他に5chサラウンド[フロントLR、センター、リアLR]の音源もある)

 DSD 11.2MHzを聞こう 第4回は、Ricardo Gallenによるフェルディナンド・ソル / ギター・ソナタ集を紹介する。DSD 11.2MHzとしては世界初の商用配信音源だ。グランド・ソナタ第1番Op.22、グランド・ソナタ第2番Op.25、グラン・ソロOp.14(初版)、ソナタOp.15-2が収録されている。サラウンド音源もあるが、本稿ではステレオ音源を取り上げる。本アルバムは、ネイティブDSD音源を専門に取り扱うNativeDSDにて配信されている。以前はここからのダウンロードにはかなりの時間がかかったが、最近になって回線を増強したのか改善されたようだ。本アルバムは8GBという大きさながら、私の100Mbpsの光回線環境では80Mbpsと実効値に近い速度でダウンロードが出来た。大体20分弱だろうか。
  解凍には7zipを用いた。なお、配信サイトにはDSFフォーマットである旨が書かれているが、実際はDSDIFFフォーマットである。    Ricardo Gallenはスペイン生まれのクラシックギタリスト。今までもNaxosなどから作品をリリースしていたが、この度自身のレーベルEudora Recordsを立ち上げた。本アルバムは世界初の商用DSD 11.2MHz音源であるとともに、Eudora Recordsにとっても初作品となる。
  DSD 11.2MHzの録音にはMerging Pyramix,Horusが用いられ、フェードイン&アウトにはDXDによる編集がされているものの、他はネイティブなDSD 11.2MHzである。録音はスペインはクエンカにあるサンミゲル教会で行われた。写真を見る限りだと奏者に近い方がサラウンド、遠い方がステレオと分けてマイクを立てており、ともにワンポイント録音のようだ。

 響きの多い教会で音量が小さめの古楽ギターを、かなりの距離を取ったワンポイントで録音するというのは難しい。ともすると音がモヤモヤと響いてしまう上に、S/Nが悪く、とてもじゃないが聞けたものではなくなってしまう。
  しかし、そこはDSD 11.2MHzによる解像度の見せどころで、響きの中にも細かい演奏テクニックが聞こえてくる。最近のギターソロ音源には巨大なギターが存在し、高域から低域、そしてギターの箱鳴りが混ざらず別々の場所に定位するものもあるが、本アルバムはそうではなく、残響も合わせて全てが程良く混ざり、ギターがセンターに浮かぶように定位する。
  また、楽器とマイクとの距離を取ることによって、ピアニッシモからフォルテッシモにかける響きの移り変わりがはっきり味わえる。弾き方によってギターの教会による響きが奏者の感情を表すかのように変化する。低ノイズのDPA 4006TLを用いたり、Horus付属のマイクプリを使ったりとS/N比改善の対策をしており、悪いとまでは言い切れない。本アルバムのノイズはむしろホールの暗騒音を感じさせるもので、残響が空間に溶けていく様子が美しく捉えられている。演奏による残響の多様な表情を味わうのも音楽鑑賞、そしてオーディオの面白味の一つだ。
  本アルバムは、残響空間の妙に観点を置きつつも、Ricardo Gallenによる細かな表現も楽しめる。録音によってバランスは異なるものの、どちらも高い次元で両立出来るのはDSD 11.2MHzの大きな魅力の一つだ。

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